音声教材は、紙の教科書を読むことに困難がある子どもが、読み上げ音声や文字の拡大、ハイライトなどを使って教科書の内容へアクセスしやすくするための教材です。医師の診断書が必須とは限りませんが、対象、対応教科書、申請者、必要な端末は教材ごとに異なります。まずは教科書を読むときの困りごとを整理し、在籍校へ相談しましょう。
- 音声教材とデジタル教科書、読み上げアプリの違い
- 2026年度に文部科学省の委託を受けている4団体の教材と特徴
- 学校への相談方法と、教材を申請するまでの具体的な手順
音声教材の申請方法は、すべての教材で共通ではありません。この記事では、子どもの学年、使用中の教科書、必要な機能、利用する端末を確認しながら、家庭ごとに合う教材と申請方法を選ぶための判断材料を解説します。(専門知識は不要です!)
音声教材とは?デジタル教科書や読み上げアプリとの違い
音声教材は、紙の教科書を読む際の負担を補い、子どもが教科書の内容を理解しやすくするための教材です。文字の読み上げだけでなく、読んでいる箇所のハイライトや表示方法の変更に対応するものもあります。
紙の教科書を読む負担を補うための教材
文部科学省が案内している音声教材は、通常の検定教科書で使われている文字や図形などを認識することが難しい児童生徒に向けて制作される教材です。
教材によっては、文字を読み上げるほか、読み上げている部分を色で示すハイライト、文字サイズや背景色の変更、ルビの表示などを利用できます。
対象となり得るのは、文字を一つずつ拾って読む、行や文字を飛ばす、教科書を読むだけで強く疲れるといった場合だけではありません。視覚障害がある場合や、手や腕の動かしにくさによってページをめくることが難しい場合、日本語指導を必要とする場合なども含まれます。
音声教材は、紙の教科書と併用しながら、子どもが学習内容へアクセスする方法を増やすために使います。
なお、文字を書くことに困難がある場合には、キーボード入力、音声入力、代筆など、音声教材とは別の支援も検討する必要があります。この記事では、主に教科書を読む際の困難と音声教材について扱います。
音声教材
紙の教科書を読むことに困難がある児童生徒などが、提供団体へ申請して利用します。読み上げ、ハイライト、表示変更、音声ペンなど、教材ごとに異なる機能があります。
学習者用デジタル教科書
紙の教科書と同じ内容を電子化した教材です。学校や教育委員会の運用に沿って使用するもので、音声教材とは制度や提供方法が異なります。
市販の読み上げアプリ
入力した文章や一般的な電子文書を読み上げるアプリです。検定教科書の図表、紙面構成、読み順に対応しているとは限りません。
オーディオブック
小説や実用書などを音声で聞くサービスです。学校で使用する検定教科書に対応した音声教材とは、目的や提供方法が異なります。
学習者用デジタル教科書とは別の仕組み
学習者用デジタル教科書は、紙の教科書と同じ内容をデジタル端末で表示することを基本とした教材です。一方、この記事で扱う音声教材は、紙の教科書を読むことに困難がある児童生徒などが、提供団体へ申請して使用する教科用特定図書等に位置づけられます。
学校で学習者用デジタル教科書を使用していても、子どもに必要な読み上げ機能や表示調整機能が利用できるとは限りません。
デジタル教科書の配布状況や家庭学習での使い方については、2026年度の学習者用デジタル教科書の仕組みも参考にしてください。
市販アプリだけでは教科書に対応できないことがある
一般的な読み上げアプリでも、文字データを取り込めば音声で聞けることがあります。ただし、教科書には縦書き、図表、脚注、数式、ルビ、複数の段組みなどが含まれます。
一般的なアプリでは、読み上げる順番が崩れたり、図と本文の関係が分かりにくくなったりすることがあります。
教科書に対応する音声教材は、提供団体が教科書データをもとに制作し、教科書名、出版社、教科書番号などを確認したうえで提供します。単に画面上の文章を機械で読み上げるだけではない点が、市販アプリとの違いです。
⚠️ デジタル教科書があっても必要な機能を確認する
学校の端末にデジタル教科書が入っているかだけでなく、読み上げ、ハイライト、文字サイズや配色の変更など、子どもに必要な機能を使えるか確認してください。
音声教材はどのような子どもが利用できる?
利用できるかどうかは、診断名や在籍学級だけでは決まりません。紙の教科書を読むときに、どのような困難が生じているかをもとに検討します。
ディスレクシアだけを対象にした教材ではない
音声教材は、ディスレクシア専用の教材ではありません。ディスレクシアは、知的発達の遅れなどとは別に、文字を正確に読んだり、滑らかに読んだりすることに困難が現れる状態を指す言葉です。
実際の音声教材の対象は、診断名だけで決まりません。文部科学省は、発達障害などによって文字や図形を認識することが困難な児童生徒のほか、肢体不自由などによって紙の教科書を読むことが困難な児童生徒、日本語指導を必要とする児童生徒も対象になり得ると案内しています。
たとえば、次のような様子がある場合は、音声教材を試す必要があるか学校と相談できます。
- 初めて見る文章を読むと、文字を一つずつ拾う読み方になる
- 行を飛ばす、文字を読み替える、文末を推測して読むことがある
- 短い文章でも読むことに時間がかかり、内容を考える前に疲れる
- 自分で読むと理解しにくいが、読み上げてもらうと内容を説明できる
- 文字の大きさ、行間、背景色を変えると読みやすくなる
- 教科書のページをめくったり、開いた状態を保ったりすることが難しい
これらは診断のためのチェック項目ではありません。学校へ相談するときに、子どもがどの場面で困っているかを具体的に説明するための観察例です。
通常学級に在籍していても利用できる
音声教材を使えるかどうかは、通常学級、特別支援学級、通級指導教室などの在籍先だけでは決まりません。通常学級に在籍している子どもでも、紙の教科書を読むことに困難があれば利用できます。
「特別支援学級ではないから対象外」「成績が一定以上だから必要ない」と一律に判断するものではありません。
読む速さだけでなく、読みの正確さ、疲れやすさ、音声で聞いた場合の理解、授業への参加状況などを含めて考えることが大切です。
LDや発達障害の基本的な考え方を確認したい場合は、LD・発達障害の特性と学校での支援もあわせてご覧ください。
医師の診断書は必須とは限らない
文部科学省のQ&Aでは、医師の診断書や意見書は判断材料の一つになり得るものの、申請時に必ず必要とは限らないと説明されています。教員や特別支援教育の担当者などが、子どもに読みの困難があると判断して申請することも可能です。
ただし、「診断書が不要」という一つの条件だけで、すべての教材を同じ方法で申請できるわけではありません。
提供団体によっては、学校などの第三者と相談した内容、読みの困難の具体的な状況、意見書や検査所見、現在使用している教科書の写真などを求める場合があります。
特にAccessReadingでは、読み困難のある児童生徒について申請する際、学校などの第三者と相談したうえで「読みの困難さに関する項目」を入力します。申請後に、意見書や検査所見などの提出を求められる可能性もあります。
利用対象や診断書の考え方については、文部科学省「音声教材に関するQ&A」でも確認できます。
2026年度の4団体が提供する主な音声教材を比較
2026年度は、文部科学省の「音声教材の効率的な製作方法等に関する調査研究」を4団体が受託しています。
利用できる教材は、学年だけでなく、使用中の教科書、必要な機能、端末環境によって変わります。すべての教材が、すべての教科書にすぐ対応できるわけではありません。
| 教材名 | 形式・主な特徴 | 対象学年・教科の目安 | 申請・費用の注意点 |
|---|---|---|---|
| マルチメディアデイジー教科書 | 文字、挿絵、音声を同期して表示。読み上げ箇所のハイライト、ルビ、文字サイズや配色の変更などに対応 | 主に小学校・中学校の全教科 | 本人・保護者、学校、教育委員会などから申請可能。年度ごとの申請が必要。端末、通信料、ⅭⅮ配送を選ぶ場合の費用などは利用者側で負担 |
| ペンでタッチすると読める音声付教科書 | 見えないコードが印刷された紙冊子を、専用の音声ペンでタッチして肉声を再生。パソコンやタブレットは不要 | 主に小中学校の国語・社会を中心に制作 | 児童生徒用の紙冊子は原則無償、音声ペンは実費。予算上限に達した場合は紙冊子も実費になる可能性あり |
| AccessReading | DOCX形式とEPUB形式。Word、Googleドキュメント、電子書籍アプリや端末の読み上げ機能などを利用 | 原則として小学6年生以上。小学5年生以下は事前相談が必要 | 個人申請と学校・団体申請がある。第三者との相談が必要。審査や未制作教材の制作に時間がかかる場合あり |
| UD-Book教科書・UD-Pdf教科書 | 原本に近い表示と、文字サイズや配色などを調整できる表示を利用。合成音声とハイライトに対応 | 小学校・中学校・高等学校。2026年度の文部科学省委託は高等学校分 | 学校、保護者、指導者、教育委員会から申請可能。制作数には予算上の上限がある。UD-Pdfの詳細は公式案内を要確認 |
マルチメディアデイジー教科書
マルチメディアデイジー教科書は、教科書の文字や挿絵を画面に表示し、読み上げ音声と現在読んでいる箇所を同期させる教材です。
文字を聞くだけでなく、「いま教科書のどこを読んでいるか」を目で確認しやすいことが特徴です。文字の大きさや色、背景色、ルビなどを変更できる教材もあります。
パソコン、タブレット、スマートフォンなどで利用でき、ブラウザ再生、必要な部分を端末へ保存する方法、アプリを利用する方法から、環境に合う再生方法を選べます。
申請には、教育委員会による一括申請、学校単位の申請、本人・保護者・支援者・教員などによる一般提供申請があります。申請は年度ごとに必要で、自動継続ではありません。
ブラウザ再生とダウンロード提供は原則無償ですが、端末や通信料は利用者側で用意します。ⅭⅮでの郵送を選ぶ場合は有料です。
詳しい申請方法は、マルチメディアデイジー教科書の一般提供申請方法をご確認ください。
ペンでタッチすると読める音声付教科書
ペンでタッチすると読める音声付教科書は、通常の教科書と見た目が近い紙冊子に、目に見えない二次元コードを印刷した教材です。
専用の音声ペンで文字や図の部分をタッチすると、その場所に対応する内容が肉声で再生されます。パソコンやタブレットを操作せず、紙面を見ながら利用できる点が特徴です。
紙冊子には鉛筆などで書き込めるため、画面操作が負担になる子どもや、授業中に紙の教材を使いたい子どもにも選択肢になります。
申請を検討している人向けの短期貸し出しも用意されています。実際に音声ペンを操作し、子どもが自分で目的の場所を再生できるか確認してから申請できます。
教科書を読むことが困難な児童生徒向けの紙冊子は原則無償ですが、音声ペンは実費です。予算上限に達した場合は、紙冊子も実費提供になる可能性があります。
2026年度の申請条件は、音声付教科書の申請方法で確認してください。
AccessReading
AccessReadingは、読むことに困難があり特別な支援を必要とする児童生徒や、日本語指導を必要とする児童生徒へ、教科書の電子データを提供するサービスです。
2026年度の公式案内では、原則として小学6年生以上が対象です。小学5年生以下で利用を検討する場合は、申請前に事務局へ相談するよう案内されています。
教材は主にDOCX形式とEPUB形式で提供されます。Microsoft Word、Googleドキュメント、電子書籍アプリなどを利用し、文字サイズや色の変更、検索、ハイライト、合成音声による読み上げなどを利用できます。
家庭の端末で教材データを管理する場合は個人申請、学校や支援機関で管理する場合は学校・団体申請を選びます。
読み困難のある児童生徒の申請では、個人申請の場合も学校などの第三者と相談したうえで、読みの困難さに関する項目を入力します。日本語指導が必要な児童生徒については、学校・団体等からの申請のみ受け付けています。
事務局の審査には1~2週間ほどかかる場合があります。申請した教科書が未制作の場合は、教科書データの受領後、提供までに1か月から数か月程度かかる予定と案内されています。
最新の対象条件と手順は、AccessReadingの登録・申請案内をご確認ください。
UD-Book教科書・UD-Pdf教科書
UD-Book教科書には、元の教科書に近いレイアウトで表示する固定モードと、文字サイズ、配色、行間、ルビなどを調整できる行移モードがあります。
合成音声による読み上げとハイライトを組み合わせ、ハイライトの長さを文節、句点、段落の3段階から選べます。固定モードと行移モードを同時に表示し、読み上げ箇所を同期することも可能です。
対応する機器は、iPad、Windowsパソコン、Mac、Chromebookです。Windows、Mac、Chromebookでは、Chromeブラウザを使ったオンライン利用が推奨されています。
公式サイトでは、小学校・中学校・高等学校の検定教科書に対応すると案内されています。ただし、1年間に新しく制作できる冊数には予算上の上限があり、すべての制作依頼に対応できるとは限りません。
2026年度に広島大学が文部科学省から受託した調査研究の対象は高等学校です。小中学校用については、寄付を募りながら対応を続けると案内されています。
学校から申請する方法に加えて、保護者、指導者、教育委員会による申請方法があります。保護者が申請する場合は、同じ紙の教科書を使用していることを確認するため、申請する教科書の写真を添付します。
文部科学省は2026年度の教材としてUD-Book教科書とUD-Pdf教科書を掲載していますが、広島大学の公式サイトでは、UD-Pdfの詳しい案内は準備中とされています。実際に申請するときは、提供可能な教材と最新の申請方法を確認してください。
最新情報は、UD-Book教科書の公式申請ページで確認できます。
文部科学省の受託4団体以外にも参考教材がある
文部科学省のページでは、2026年度の調査研究受託4団体とは別に、NPO法人エッジの音声教材BEAMも参考情報として紹介されています。
また、高校生向けには、iPadを利用するPDF版拡大図書に関する情報も掲載されています。
これらを検討する場合も、文部科学省の委託4団体と同じ申請条件だと決めつけず、それぞれの公式案内で対象者、対応教科書、必要な端末、申請方法を確認してください。
子どもに合う音声教材を選ぶ5つの確認項目
音声教材は、知名度や機能の多さだけで選ぶものではありません。現在使用している教科書と対応していることに加え、子どもが無理なく操作できることが重要です。
申請前に確認したい5項目
- 現在使用している教科書の学年、教科、出版社、教科書番号
- 読み上げだけでなく、ハイライト、ルビ、配色変更などが必要か
- 紙冊子と音声ペン、パソコン、タブレットのどれが使いやすいか
- 学校と家庭のどちらで教材データを管理するか
- 制作済み教材か、提供まで待つ必要がある教材か
使用中の教科書を正確に確認する
同じ学年、同じ教科でも、地域や学校によって使用する出版社が異なります。同じ出版社でも、改訂年度や教科書番号が異なれば、別の教科書として扱われる場合があります。
申請前には、教科書の表紙や裏表紙などを確認し、次の情報を控えてください。
- 学校種と学年
- 教科名
- 教科書の正式名称
- 出版社名
- 教科書番号
学校から申請する場合も、保護者から申請する場合も、使用している教科書を正確に特定できると手続きを進めやすくなります。
読み上げ以外に必要な機能を整理する
音声で聞ければ理解しやすくなる子どももいれば、文字と音声を同時に確認した方が理解しやすい子どももいます。
次のような違いを確認しましょう。
- 肉声と合成音声のどちらが聞きやすいか
- 一文、語句、文節、段落のどの単位でハイライトしたいか
- 総ルビや学年に応じたルビが必要か
- 文字サイズ、行間、文字色、背景色の変更が必要か
- 紙面へ直接書き込みたいか
- 図表や挿絵を元の教科書に近い配置で見たいか
合成音声は、端末やアプリによって読み方が異なり、読み間違いが生じることもあります。音声の自然さを優先するのか、表示調整や検索機能を優先するのかも判断材料になります。
サンプルや短期貸し出しを利用する
複数の提供団体が、教材のサンプルや体験方法を用意しています。申請前に試せる場合は、保護者だけで判断せず、実際に使用する子ども本人にも操作してもらいましょう。
確認したいのは、最初の数分だけ操作できるかどうかではありません。授業や家庭学習を想定し、次の点を見ます。
- 自分で再生、停止、ページ移動ができるか
- 音声を聞きながら教科書の場所を追えるか
- 一定時間使ったときに、目や耳、姿勢への負担が強くないか
- 内容について質問したとき、自分で読んだ場合より理解しやすいか
- 学校の端末で必要なアプリやブラウザを利用できるか
一つの教材が合わなかったとしても、音声教材そのものが合わないとは限りません。音声、表示方法、操作方法が異なる別の教材を試すことで、使いやすくなる場合があります。
学校への相談から音声教材を申請するまでの手順
音声教材は保護者から直接申請できるものもあります。ただし、最初に在籍校へ相談しておくと、授業中の使用方法、学校端末の利用、教科書情報の確認を進めやすくなります。
ステップ1:子どもの困りごとを具体的に記録する
学校へ伝えるときは、「ディスレクシアだと思う」「読むのが苦手」という言葉だけで終わらせず、実際の学習場面を記録します。
たとえば、同じ文章について次のような違いを確認できます。
- 自分で読んだ場合にかかった時間
- 読み間違い、読み飛ばし、行の見失いがあったか
- 読んだ後に内容を説明できたか
- 大人が読み上げた場合は理解できたか
- どのくらい読むと疲れや集中の低下が見られるか
家庭での記録は、学校で行う正式な検査の代わりではありません。ただし、「音声で聞くと理解が変わるか」という情報は、支援方法を考える材料になります。
ステップ2:担任や特別支援教育コーディネーターへ相談する
最初の相談先は担任で構いません。担任だけで判断が難しい場合は、特別支援教育コーディネーターや通級指導教室の担当者などにも相談したいと伝えましょう。
学校への相談文は、次のようにまとめられます。
教科書を読むときに、文字を一つずつ追うため非常に時間がかかり、内容を理解する前に疲れてしまうことがあります。一方で、文章を読み上げてもらうと内容を理解しやすいようです。音声教材が利用できるか、学校での様子も含めて相談したいです。
すでに診断がある場合は、診断内容を伝えて構いません。ただし、診断名だけでなく、授業や宿題でどのように困っているかを具体的に共有することが重要です。
ステップ3:学校での利用環境を確認する
学校のタブレットで使用する場合は、家庭の端末で使えるかどうかとは別の確認が必要です。
- 学校端末でブラウザ再生ができるか
- 必要なアプリを追加できるか
- 学校のネットワークで教材サイトへ接続できるか
- 授業中にイヤホンを使えるか
- 学校と家庭の両方で使う場合、誰がデータを管理するか
学校端末には、アプリのインストールや外部サイトへの接続に制限が設けられていることがあります。申請後に利用できないと判明しないよう、教材を選ぶ段階で確認しましょう。
ステップ4:学校申請か個人申請かを決める
申請者は教材によって異なります。本人や保護者から申請できる教材もあれば、学校や教育委員会からまとめて申請できる教材もあります。
判断材料の一つは、教材データをどこで管理するかです。家庭の端末を中心に使う場合は個人申請、学校端末を中心に使う場合は学校・団体申請が適していることがあります。
ただし、AccessReadingで日本語指導が必要な児童生徒が利用する場合など、学校・団体からの申請に限定されているケースもあります。実際の申請区分は、各団体の公式案内に従ってください。
学校から「個人で申請してください」と案内された場合も、授業中に使用する予定があるなら、利用方法や端末環境について学校と共有しておく必要があります。
ステップ5:各提供団体へ申請する
音声教材は、文部科学省へ直接申し込むのではなく、利用したい教材を制作・提供する団体へ申請します。
文部科学省の音声教材の提供申請についてから、2026年度の申請先と問い合わせ先を確認できます。
申請前には、次の情報を手元に用意しておくと手続きを進めやすくなります。
- 申請者と児童生徒の基本情報
- 読みの困難の具体的な状況
- 在籍校、学年、学級などの情報
- 申請する教科書の名称、出版社、教科書番号
- 学校や支援担当者と相談した内容
- 教材によっては紙の教科書を撮影した画像
すでに制作済みの教材は、比較的早く提供される場合があります。未制作の教科書は、完成まで数か月かかることもあります。
新年度の授業開始から使いたい場合は、教科書が決まり次第、早めに学校と提供団体へ確認してください。
利用開始後に確認したい注意点
音声教材は、申請が承認されれば終わりではありません。進級時の手続き、教材データの管理、子どもの使用感を定期的に確認する必要があります。
年度ごとの継続申請を確認する
音声教材は、一度申請すれば卒業まで自動的に使い続けられるとは限りません。マルチメディアデイジー教科書やUD-Book教科書では、年度ごとの申請が案内されています。
AccessReadingにも継続利用申請の手続きがあります。申請済みの教材を翌年度も自動的に利用できるとは決めつけず、利用している団体の案内を確認してください。
進級すると教科書が変わり、同じ教科でも出版社や教科書番号が変わる場合があります。年度末から新年度にかけて、学校から配布される教科書の情報を確認し、継続申請や教材追加の手続きを行いましょう。
教材データを対象者以外へ共有しない
音声教材には、著作権のある教科書データが含まれています。申請した児童生徒の学習に使うことを前提に提供されているため、家族や友人へデータを渡したり、インターネット上へ公開したりしてはいけません。
学校と家庭の複数端末で利用できる教材もありますが、具体的なダウンロード方法は各団体へ確認する必要があります。
対象児童生徒以外が自由に利用できる状態にしないよう注意し、利用できる端末、ダウンロード方法、年度末のデータの扱いなどは、各団体の利用規約に従ってください。
⚠️ 教材ファイルを一般の電子書籍として扱わない
音声教材は、対象となる児童生徒の学習用として提供されます。無断コピー、他人への譲渡、不特定多数が利用できる共有フォルダーへの保存などは避け、学校と家庭のどちらが管理するかを決めてください。
長時間使用による負担にも配慮する
タブレットやパソコンを使う教材では、画面を長時間見続けることによる目の疲れや、同じ姿勢を続ける負担にも注意が必要です。
文部科学省は、子どもの身体や障害の状況を踏まえ、本人の負担がない範囲で利用する配慮が必要としています。
音声を長く聞くと疲れる場合は、短い区切りで停止する、音量や読み上げ速度を調整する、紙の教科書と交互に使うなどの方法があります。授業中の使用では、イヤホンの音量や周囲の声の聞こえ方にも配慮しましょう。
合わない場合は別の教材も試せる
文部科学省は、使用している音声教材が子どものニーズに合わなかった場合、別の団体が制作する教材を申請して使用できると案内しています。年度途中から利用を始めることも可能です。
変更を考えるときは、「使わなくなった」という結果だけでなく、何が合わなかったかを整理します。
- 合成音声の読み方が聞き取りにくかった
- 操作手順が多く、自分だけでは使えなかった
- 文字と音声のハイライト範囲が合わなかった
- 紙面に近い表示より、文字だけの表示の方が読みやすかった
- タブレットより音声ペンの方が授業中に使いやすかった
教材の種類を変えるだけでなく、文字サイズ、背景色、読み上げ速度などの設定を見直すことで使いやすくなる場合もあります。本人、保護者、学校で使用感を共有しながら調整してください。
よくある質問(FAQ)
医師の診断がなくても音声教材を申請できますか?
医師の診断書や意見書は、すべての音声教材で必須というわけではありません。文部科学省は、教員や特別支援担当者などの判断による申請も可能としています。ただし、提供団体によっては、学校との相談内容、意見書、検査所見などを求める場合があります。
保護者から直接申請できますか?
保護者による個人申請を受け付けている教材があります。マルチメディアデイジー教科書、AccessReading、UD-Book教科書などは、個人申請の方法を案内しています。ただし、日本語指導が必要な児童生徒のAccessReading申請など、学校・団体申請に限られるケースもあります。
音声教材は無料で使えますか?
文部科学省の委託事業で制作される教材は、原則として無償で提供されます。ただし、パソコンやタブレット、通信料、専用の音声ペン、教材の送料やⅭⅮ配送費などが必要になる場合があります。教材ごとの最新費用は公式ページで確認してください。
すべての教科書や教科に対応していますか?
すべての教材が、すべての学年、教科、出版社の教科書を制作済みとは限りません。未制作の教科書について新規制作を受け付ける団体もありますが、制作期間、予算、制作計画などにより対応できない場合があります。
年度途中からでも利用できますか?
年度途中から申請し、利用を始めることも可能です。ただし、申請した教材が未制作の場合は、提供まで一定の期間がかかります。利用の必要性が分かった時点で、早めに学校と提供団体へ相談してください。
学校と自宅の両方の端末で使えますか?
学校と自宅の両方の端末で利用できる教材もあります。ただし、ダウンロード方法やデータ管理の条件は団体ごとに異なります。対象児童生徒以外が自由に利用できる状態にならないよう注意し、利用方法を提供団体へ確認してください。
音声教材を使うと紙の教科書は受け取れなくなりますか?
音声教材は、検定教科書や拡大教科書などと併用する教材です。紙の教科書などの給与を受けたうえで、その教科書に対応する音声教材を利用します。
まとめ:音声教材は子どもの読み方と利用環境に合わせて選ぶ
この記事では、読み書きが苦手な子どもが利用できる音声教材と、学校への相談から申請までの流れを解説しました。
- 対象はディスレクシアだけではない:紙の教科書を読むことに困難がある児童生徒や、日本語指導を必要とする児童生徒なども対象になり得ます。
- 診断書は必須とは限らない:ただし、学校など第三者との相談内容、意見書、検査所見などを求められる場合があります。
- 2026年度の文部科学省委託団体は4団体:教材によって、対象学年、形式、端末、申請者、費用が異なります。
- 使用中の教科書を正確に確認する:教科書名、出版社、教科書番号を確認してから、対応教材を探します。
- 最初の行動は学校への相談:診断名だけでなく、読む時間、疲れ方、音声で聞いた場合の理解を具体的に伝えます。
音声教材は、使えば自動的に読めるようになる教材でも、すべての子どもに同じように合う教材でもありません。子どもが学習内容を理解するために、どの方法なら読む負担を減らせるかを確認するための選択肢です。
まずは「教科書を読むときに何が起きているか」を短く記録し、担任や特別支援教育コーディネーターへ相談してください。そのうえで、使用中の教科書、必要な機能、学校と家庭の端末環境に合う教材を選びましょう。





