小学校低学年の道徳に合う絵本は、今の子どもが関心を持っているテーマと、読後に無理なく話せる内容から選ぶのが基本です。まずは「思いやり」「協力」「個性」のうち、学校や家庭での経験に近いテーマを一つ選びましょう。読み終えた後は教訓を説明するのではなく、子どもが気になった場面を一つ聞いてみてください。
- 思いやり・協力・個性のテーマ別に、低学年と読みたい絵本を選べます
- 幼児期から親しまれている作品を小学生と読むときの考え方が分かります
- 道徳的な正解を押し付けない、読後の問いかけ方を確認できます
小学校低学年の道徳絵本は「テーマ」と「話しやすさ」で選ぶ
小学校1・2年生と読む絵本は、人気順や対象年齢だけで決める必要はありません。子どもが学校や家庭で経験していることと、物語のテーマが自然につながるかを考えて選びましょう。
例えば、友達とのすれ違いが気になっているときは「思いやり」、グループ活動に参加し始めた時期なら「協力」、周囲との違いを気にしているときは「個性」を扱う作品が、話を始めるきっかけになります。
思いやり・親切
相手の立場を想像することや、誰かを気に掛けて行動することについて話せます。
協力・分かち合い
一人では難しいことに力を合わせる過程や、できた喜びを共有することを考えられます。
個性・勇気
周囲との違い、自分にできること、集団の中での役割について話せます。
6冊のテーマと選び方を比較
| 作品 | 話しやすいテーマ | こんなときに選びやすい |
|---|---|---|
| どうぞのいす | 思いやり、譲り合い | 自分の次に使う人のことを考えたいとき |
| しんせつなともだち | 親切、友達とのつながり | 相手を気に掛けて行動することを考えたいとき |
| おおきなかぶ | 協力、一人ひとりの役割 | 力を合わせる意味について話したいとき |
| ぐりとぐら | 協力、分かち合う楽しさ | 一緒に作る過程や喜びに注目したいとき |
| くれよんのくろくん | 個性、仲間との関わり | 周囲との違いや仲間外れについて考えたいとき |
| スイミー | 個性、勇気、知恵 | 自分の役割や仲間と行動することを考えたいとき |
同じ作品でも、子どもによって気になる場面は異なります。大人がテーマを一つに決めてしまわず、子どもが話したい内容を優先してください。
文部科学省の「小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編」では、児童が道徳的価値を自分との関わりで捉え、多様な感じ方や考え方に触れながら、物事を多面的・多角的に考えることが重視されています。家庭で絵本を読む場合も、この考え方を参考にすると、一つの感想へ誘導しない対話につなげられます。
思いやり・親切について話せる絵本
思いやりを扱う絵本では、「親切にしなければいけない」と結論を教えるよりも、登場人物が誰のことを考えて行動したのかに注目すると、子どもが自分の言葉で考えやすくなります。
『どうぞのいす』|次に来る誰かを想像する
香山美子 作/柿本幸造 絵/ひさかたチャイルド
ひさかたチャイルドの公式ページでは、対象年齢を「3、4歳から」としています。「から」という表記は、少なくとも読む年齢の上限を示すものではありません。
うさぎが作ったいすと「どうぞ」という言葉をきっかけに、動物たちの行動が次へつながっていく作品です。小学1・2年生と読むときは、物語の出来事だけでなく、まだ会っていない相手のことを想像する気持ちにも目を向けられます。
合いやすい場面
順番を待つこと、物を譲ること、次に使う人への配慮について話したいときに選びやすい作品です。
問いかけの例
- 動物たちは、まだ会っていない相手のことをどうして考えたのかな?
- 「どうぞ」と言われたとき、どんな気持ちになると思う?
作品の内容や読み聞かせのポイントを詳しく知りたい場合は、『どうぞのいす』の読み聞かせ方を詳しく見るも参考にしてください。
『しんせつなともだち』|友達を思って行動する
方軼羣 作/君島久子 訳/村山知義 画/福音館書店
寒い冬の中で、友達を思って食べ物を届けようとする動物たちの行動がつながっていく物語です。相手がその行動をすぐに知るかどうかにかかわらず、友達を気に掛ける気持ちについて話せます。
福音館書店の公式ページでは、現在の対象年齢表示は確認できませんが、小学校1・2年生の国語教科書への採用情報が掲載されています。一人で読む場合は、子どもの読書経験や文章量への慣れ方を見ながら選びましょう。
合いやすい場面
友達を気遣うこと、誰かが困っているときの行動、相手の立場を想像することについて話したいときに向いています。
問いかけの例
- 自分がしたことを相手が知らなくても、親切にしたいと思う?
- 動物たちは、友達が何を必要としていると考えたのかな?
「親切とはこうすること」と答えをまとめず、「ほかの助け方もあったかな」と問いを広げると、子どもが複数の行動を考えられます。
協力・分かち合う楽しさを考える絵本
協力を扱う作品では、「みんなで仲良くすれば成功する」という結果だけでなく、一人ひとりがどのように参加したかに注目します。目立つ役割だけが大切なのではないことも話しやすいテーマです。
『おおきなかぶ』|小さな力も協力の一部になる
A・トルストイ 再話/内田莉莎子 訳/佐藤忠良 画/福音館書店
おじいさん一人では抜けない大きなかぶに、次々と仲間が加わっていくロシアの昔話です。繰り返しの言葉や動きを楽しめるため、幼児期に読んだことがある子どもでも、小学校低学年で改めて楽しめます。
福音館書店の公式ページでも、みんなで力を合わせて大きなかぶを抜く物語として紹介されています。
合いやすい場面
グループ活動、係活動、きょうだいや友達と力を合わせることについて話したいときに選びやすい作品です。
問いかけの例
- だれの力が一番大切だったと思う?
- 途中の一人が参加しなかったら、どうなっていたかな?
最後に参加した登場人物だけを成功の理由と決める必要はありません。それまで力を出していた全員の存在や、声を掛けて仲間を増やしたことにも目を向けられます。
作品についてさらに詳しく話したい場合は、『おおきなかぶ』で協力について話すポイントもご覧ください。
『ぐりとぐら』|一緒に作り、一緒に楽しむ
なかがわりえこ 作/おおむらゆりこ 絵/福音館書店
野ねずみのぐりとぐらが、森で見つけた大きな卵をどうするか考え、協力して料理する物語です。力仕事だけでなく、相談すること、方法を考えること、準備を分担することも協力の一部だと気付けます。
完成したものを自分たちだけで楽しむのではなく、周囲の動物たちと喜びを分かち合う場面にも注目できます。詳しい書誌情報は福音館書店の公式ページで確認できます。
合いやすい場面
友達と一緒に作ること、役割分担、完成した喜びを共有することについて話したいときに向いています。
問いかけの例
- 二人で考えたからできたことは、どんなことだったかな?
- 作ったものをみんなで分けたとき、ぐりとぐらはどんな気持ちだったと思う?
個性・勇気・自分の役割を考える絵本
個性を扱う絵本では、「得意なことがあれば価値がある」と限定しないことが大切です。活躍する前から、その登場人物は大切な存在だったのではないかという視点も持つと、話が広がります。
『くれよんのくろくん』|違いが役割につながる
なかやみわ 作・絵/童心社
童心社の公式ページでは、対象年齢を3歳からと案内しています。色とりどりのくれよんが絵を描く中、くろくんは仲間に入れてもらえません。
黒という色の特徴や役割だけでなく、仲間外れにされたときの気持ち、周囲のくれよんたちの考え方にも注目できます。
合いやすい場面
自分と友達の違い、仲間外れ、得意なことや役割について話したいときに選びやすい作品です。
問いかけの例
- くろくんは、活躍する前から大切な仲間だったと思う?
- ほかのくれよんたちは、どうすれば一緒に描けたかな?
⚠️ 「役に立つから大切」と決めない
くろくんの活躍だけを教訓にすると、「得意なことや役割がなければ仲間になれない」という読み方につながる可能性があります。活躍する前のくろくんの気持ちや、周囲のくれよんたちができたことも一緒に考えてみましょう。
作品を通して個性や仲間との関わりを考えるポイントは、『くれよんのくろくん』で個性を考えるで詳しく紹介しています。
『スイミー』|一人で考えることと、仲間と動くこと
レオ=レオニ 作/谷川俊太郎 訳/好学社
小さな黒い魚のスイミーが、さまざまな経験を経て新しい仲間と出会い、自分にできることを考える物語です。個性だけでなく、悲しみから前へ進むこと、周囲を観察すること、知恵を出して仲間と行動することなど、複数の視点から読めます。
好学社の公式ページには、作者、翻訳者、発行年、ページ数などの書誌情報が掲載されています。現在のページでは対象年齢が明記されていないため、子どもの興味や文章への慣れ方を見て選びましょう。
合いやすい場面
周囲との違いを気にしているとき、新しい集団に入るとき、自分にできる役割を考えたいときに向いています。
問いかけの例
- スイミーは、どうして自分にできることを見つけられたのかな?
- 仲間たちは、スイミーの考えを聞いてどんな気持ちになったと思う?
「勇気を出せば何でもできる」とまとめるのではなく、スイミーが見たり、考えたり、仲間へ伝えたりした過程にも注目すると、一つの教訓に限定せずに読めます。
幼児向けの絵本を小学生と読むときの考え方
出版社が「3歳から」「3、4歳から」と表示している作品でも、その年齢を過ぎると読めなくなるわけではありません。少なくとも「から」という表記は、年齢の上限を示していません。
小学校低学年では、文字を読む力だけでなく、物語の登場人物を自分の生活と結び付けて考える機会も増えていきます。幼児期に楽しんだ作品でも、友達関係や集団生活を経験した後に読み直すと、以前とは違う場面が気になることがあります。
低学年に読む絵本を選ぶときの確認ポイント
- 子どもが今、友達関係や学校生活のどのようなことに関心を持っているか
- 読み聞かせで楽しむのか、自分で読む本として選ぶのか
- 文章量だけでなく、絵や繰り返しの表現を楽しめるか
- 大人が教えたい内容ではなく、子ども自身が興味を持てそうか
- 難しい感想を求めず、物語を楽しむだけでもよいと思えるか
読み聞かせと自分読みは分けて考える
内容を理解して楽しめることと、文章を一人で読めることは同じではありません。自分で読むには少し長い作品でも、大人が読み聞かせれば、絵を見ながら物語に集中できる場合があります。
反対に、文章が短く自分で読める本でも、登場人物の気持ちを言葉で説明するのは難しいことがあります。そのときは感想を細かく聞くより、一緒にページを見返すだけでも構いません。
知っている作品を読み直してもよい
『おおきなかぶ』や『ぐりとぐら』のように、幼児期から知っている作品を選んでも問題ありません。初めて読む本だけが対話のきっかけになるわけではなく、展開を知っているからこそ、登場人物の行動や絵の細部へ目を向けやすくなることがあります。
ただし、「小学生なのだから深い感想を言ってほしい」と期待しすぎないようにしましょう。「面白かった」「この絵が好き」という感想も、その子が実際に感じた反応です。
道徳的な正解を押し付けない問いかけ方
絵本を読み終えた直後に「このお話から何を学んだ?」と聞くと、子どもは大人が期待する答えを探そうとする場合があります。最初は、正解を一つに決めない具体的な問いから始めましょう。
「どう思った?」より場面を絞って聞く
自由度の高い「どう思った?」という質問は、低学年の子どもには答えにくい場合があります。次のように、絵や場面を指しながら聞くと話しやすくなります。
- どの場面が一番気になった?
- どの登場人物の気持ちが分かると思った?
- 自分がこの場にいたら、何をしたい?
- ほかにどんな方法があったと思う?
- 最初と最後で、気持ちが変わった登場人物はいるかな?
子どもの答えを評価せず、理由を聞く
親が想定していなかった感想が出ても、すぐに訂正する必要はありません。「そう感じたんだね」「どの場面を見てそう思った?」と理由を聞くことで、子ども自身が考えを整理しやすくなります。
大人の感想を伝える場合は、子どもの発言を聞いた後に「私はこう思ったよ」と、一つの見方として話しましょう。「本当はこういう話だよ」と結論を上書きしないことが大切です。
答えが出ないときは、そのまま終えてよい
子どもが「分からない」「別に」と答えたときは、質問を続けず、そのまま終えても構いません。言葉にしなくても、絵を見つめたり、物語を思い返したりしている場合があります。
絵本を読んだその日に答えが出なくても、後日、学校や家庭で似た出来事に出会ったときに物語を思い出すことがあります。すぐに成果や変化を求めないことも、親子で絵本を楽しむためのポイントです。
よくある質問(FAQ)
幼児向けと書かれた絵本を小学1・2年生に読んでもよいですか?
読んでも構いません。「3歳から」などの表示は、その年齢を過ぎると読めないという上限ではありません。今の子どもが物語や絵に興味を持てるか、文章量が合っているかを見て選びましょう。
絵本を読んだ後は、必ず感想を聞いた方がよいですか?
毎回聞く必要はありません。静かに絵を見ているときや、物語の余韻を楽しんでいる様子があるときは、そのまま終えても構いません。
子どもが親と違う感想を言ったら訂正すべきですか?
物語の事実を大きく読み違えている場合を除き、すぐに訂正する必要はありません。「どの場面からそう思ったの?」と理由を聞くと、親とは異なる見方に気付けることがあります。
朝読書や教室での読み聞かせにも使えますか?
今回紹介した作品は、朝読書や読み聞かせの候補にもできます。学級で扱う場合は児童の発達段階や人間関係に配慮し、特定の児童の出来事と結び付けたり、全員に同じ感想を求めたりしないことが大切です。
読書感想文につなげるには何を聞けばよいですか?
「一番気になった行動」「自分ならどうするか」「読む前と後で変わった考え」の中から一つを選んで聞くと、子ども自身の感想を整理しやすくなります。親が文章を作るのではなく、子どもの言葉を短くメモしておきましょう。
まとめ:低学年の道徳絵本は子どもの関心に合わせて選ぼう
小学校低学年と読む道徳絵本は、年齢や人気だけでなく、今の子どもが関心を持っているテーマから選びましょう。
- テーマから選ぶ:友達関係や学校生活など、今の子どもの関心に近い作品を選びます。
- 幼児期からの作品も候補にする:「○歳から」という表記だけで、小学生には幼いと判断する必要はありません。
- 教訓を先に説明しない:登場人物の気持ちや、自分ならどうするかを子どもの言葉で考えます。
- 感想に正解を設けない:親と違う意見や短い感想も、その子自身の読み方として受け止めます。
- 答えを急がない:読後に話したくないときは、物語を楽しむだけで終えても構いません。
最初は、思いやり・協力・個性の中から、今の子どもの生活に近いテーマを一つ選んでみてください。質問をたくさん用意するより、親子で物語や絵を楽しみ、子どもが自分から話し始めたときに耳を傾けることが、自然な対話につながります。


