発達障害とは?ASD・ADHD・LDの特性と支援の基礎知識【初心者向け完全ガイド】

  • 公開日:2025/11/7
  • 最終更新日:
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発達障害とは?ASD・ADHD・LDの特性と支援の基礎知識【初心者向け完全ガイド】

「子どもが発達障害と診断された…でも発達障害って何?」「自分は発達障害かもしれない…どんな特性があるの?」そんな疑問を抱えていませんか?

この記事では、発達障害の基礎知識について、定義、種類(ASD・ADHD・LD)、特性、診断方法、支援の考え方をわかりやすく解説します。

💡 発達障害は「個性の偏り」

発達障害は、「脳の個性の偏り」のようなものです。右利きと左利きの違いに似ています。右利きが「普通」で左利きが「障害」ではありませんが、右利き用に作られた社会では左利きの人は少し不便を感じます。発達障害も同じで、多数派の脳の使い方に合わせて作られた社会で、少数派の脳の使い方をする人が困難を感じる状態です。適切な配慮と支援があれば、その個性を活かして活躍できます。

この記事を読めば、発達障害の基本的な理解と、どのような支援があるかがわかります。(専門用語を避け、初心者にもわかりやすく解説します!)

注:発達障害は多様です。この記事では主要な3つの発達障害(ASD・ADHD・LD)に焦点を当てていますが、複数の特性を併せ持つこともあります。また、発達障害の診断や支援は個別性が高く、一人ひとり異なります。

⚠️ 発達障害は「病気」ではありません

発達障害は、脳の発達の仕方の違いによる特性であり、「病気」や「治すもの」ではありません。薬や治療で「治る」ものではなく、その人の特性を理解し、適切な環境調整と支援によって、困りごとを減らし、強みを活かすことが支援の目標です。


発達障害とは?

発達障害とは、生まれつきの脳の発達の違いにより、日常生活や社会生活において困難が生じる状態を指します。

法律上の定義

発達障害者支援法(平成16年法律第167号)では、以下のように定義されています:

「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。

出典:発達障害者支援法(e-Gov法令検索)

発達障害の特徴

生まれつきの特性

後天的な病気や事故ではなく、生まれつきの脳の発達の違い

早期に発現

乳幼児期〜学齢期に特性が現れることが多い

継続する特性

成長とともに変化はするが、基本的な特性は続く

多様性

同じ診断名でも、一人ひとり特性は大きく異なる

参考:厚生労働省「発達障害者支援施策」

💡 発達障害は「メガネ」が必要な状態

発達障害は、視力が弱くて「メガネ」が必要な状態に似ています。視力が弱いことは「病気」ではなく「個性」ですが、メガネがないと日常生活で困ります。メガネをかければ、普通に生活できます。発達障害も同じで、適切な「支援」というメガネがあれば、困りごとは減り、能力を発揮できます。


発達障害の主な種類

発達障害は大きく分けて以下の3つに分類されます。

①ASD(自閉スペクトラム症 / Autism Spectrum Disorder)

以前の名称:自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害等

主な特性:

  • 社会性・コミュニケーションの困難
    • 相手の気持ちを読み取るのが苦手
    • 暗黙のルールや「空気を読む」ことが難しい
    • 言葉を文字通りに受け取る(冗談や比喩が理解しにくい)
    • 目を合わせるのが苦手、または逆に見つめすぎる
    • 一方的に話す、会話のキャッチボールが難しい
  • こだわりの強さ・感覚の敏感さ
    • 特定のものや活動への強いこだわり
    • 予定が変わるとパニックになる
    • 同じ行動の繰り返し(ルーティン)
    • 音、光、触覚、味覚等に過敏または鈍感

具体例:

・友達の表情を見ても、怒っているのか悲しいのかわからない
・「手を貸して」と言われて、本当に手を差し出してしまう
・電車の時刻表を全部覚えている
・服のタグがチクチクして我慢できない
・予定が変わると泣いて拒否する

💡 ASDは「異文化の中で暮らす」ような状態

ASDの特性は、外国で暮らすようなものです。周りの人が当たり前にわかる「暗黙のルール」がわからない。言葉は通じるけど、ニュアンスがわからない。「郷に入っては郷に従え」と言われても、その「郷のルール」が見えない。だから、ルールを明文化し、具体的に教えてもらえれば、理解して行動できます。

②ADHD(注意欠如・多動症 / Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)

以前の名称:注意欠陥・多動性障害(AD/HD)

主な特性:

  • 不注意
    • 集中が続かない、気が散りやすい
    • 忘れ物、なくし物が多い
    • うっかりミスが多い
    • 話を最後まで聞けない
    • 計画を立てて行動するのが苦手
  • 多動性
    • じっとしていられない
    • 座っていても手足をモジモジ動かす
    • 走り回る、高いところに登る
    • 静かに遊べない
  • 衝動性
    • 順番を待てない
    • 思ったことをすぐ口に出す
    • 人の話に割り込む
    • 欲しいものを我慢できない

タイプ:

  • 不注意優勢型:不注意が目立つ(多動性は少ない)
  • 多動・衝動優勢型:多動性・衝動性が目立つ(不注意は少ない)
  • 混合型:両方の特性がある

具体例:

・宿題を忘れる、プリントをなくす
・授業中にぼーっとして話を聞いていない
・授業中に席を離れて歩き回る
・友達の遊びに割り込んでしまう
・思いついたことをすぐ行動に移してしまう

💡 ADHDは「ラジオの周波数がずれている」状態

ADHDの不注意は、ラジオの周波数がずれて雑音が入るようなものです。集中したいのに、周りの音や考えが次々と入ってきて、聞きたい放送(やるべきこと)に集中できません。周波数を合わせる(環境調整や服薬)ことで、クリアに聞こえるようになります。

③LD(学習障害 / Learning Disabilities)

別名:SLD(限局性学習症 / Specific Learning Disorder)

主な特性:

知的な遅れはないのに、特定の学習領域(読み、書き、計算等)に著しい困難がある状態です。

  • 読字障害(ディスレクシア)
    • 文字を読むのが極端に遅い
    • 読み間違いが多い(「は」と「ほ」を間違える等)
    • 音読が苦手
    • 読んでも内容が理解できない
  • 書字障害(ディスグラフィア)
    • 文字を書くのが極端に遅い
    • 鏡文字を書く
    • マス目からはみ出す
    • 漢字を覚えられない
  • 算数障害(ディスカリキュリア)
    • 数の概念が理解できない
    • 簡単な計算ができない
    • 繰り上がり・繰り下がりが理解できない
    • 文章題が解けない

具体例:

・教科書を読むのに時間がかかりすぎる
・漢字テストで何度やっても覚えられない
・「3+5」はできるけど「5+3」がわからない
・会話は普通にできるのに、音読だけが極端に苦手
・他の教科は得意なのに、算数だけが全くできない

💡 LDは「特定の筋肉だけが弱い」状態

LDは、体は健康なのに、特定の筋肉だけが極端に弱い状態に似ています。走ることはできるのに、ボールを投げる筋肉だけが弱い。だから、走る競技では活躍できるけど、野球では困る。同じように、聞くことや話すことはできるのに、読み書きだけが極端に苦手。得意な方法(聞く、見る、話す)で学べば、十分に学習できます。


発達障害の診断

診断の流れ

発達障害の診断は、以下の流れで行われます。

ステップ1: 相談(保健センター、発達障害者支援センター等)
ステップ2: 医療機関の受診(小児科、児童精神科、精神科)
ステップ3: 問診・行動観察・検査
ステップ4: 診断(診断基準に基づく総合的判断)
ステップ5: 支援計画の作成

診断に使われる検査

主な検査の種類

  • 発達検査:発達の状態を評価(新版K式発達検査等)
  • 知能検査:知的能力を評価(WISC-Ⅴ、WAIS-Ⅳ等)
  • 行動評価:日常生活の行動を評価(質問紙、チェックリスト等)
  • 診察・面接:医師による問診と行動観察

診断基準

発達障害の診断には、国際的な診断基準が用いられます:

  • DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版):アメリカ精神医学会
  • ICD-11(国際疾病分類第11版):世界保健機関(WHO)

参考:国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター

診断を受けるメリット

本人・家族の理解

困りごとの原因がわかり、適切な対応ができる

支援制度の利用

療育、福祉サービス、手帳取得等の支援が受けられる

学校・職場での配慮

合理的配慮を受けやすくなる

自己理解

自分の特性を理解し、対処法を学べる

⚠️ 診断は必須ではありません

診断を受けるかどうかは本人・家族の判断です。診断がなくても、困りごとに対する支援は受けられます。ただし、一部の福祉サービス(療育手帳、精神障害者保健福祉手帳等)は診断書や医師の意見書が必要です。


早期発見・早期支援の重要性

発達障害は、早期に発見し、早期に適切な支援を始めることが非常に重要です。

早期支援のメリット

  • 二次障害の予防:叱られ続けることによる自己肯定感の低下、不登校、うつ等を予防
  • 適応力の向上:幼少期から適切な支援を受けることで、社会適応力が向上
  • 家族の負担軽減:接し方がわかることで、家族の負担やストレスが軽減
  • 強みを伸ばす:特性を理解し、強みを活かす環境を早期に整えられる

💡 早期支援は「苗木の支柱」

早期支援は、植えたばかりの苗木に支柱を立てるようなものです。苗木が小さいうちに支柱を立てれば、まっすぐ大きく育ちます。大きく曲がって育った木を後から矯正するのは困難です。同じように、幼少期から適切な支援があれば、子どもは自分らしく健やかに育ちます。

乳幼児健診の活用

市区町村で実施される乳幼児健診(1歳6か月健診、3歳児健診等)は、発達の様子を確認する重要な機会です。気になることがあれば、遠慮なく相談しましょう。

参考:厚生労働省「乳幼児健康診査」


支援の基本的な考え方

発達障害の支援は、以下の基本的な考え方に基づいて行われます。

①個別性の尊重

同じ診断名でも、一人ひとり特性は異なります。その人に合った支援を個別に考えることが大切です。

②強みを活かす

苦手なことを「直す」のではなく、得意なことを活かして困りごとを補う視点が重要です。

例:

  • 聞くのは苦手だけど読むのは得意→文字で指示を伝える
  • 書くのは苦手だけど話すのは得意→口頭で発表させる
  • 集団は苦手だけど一人では集中できる→個別学習の機会を増やす

③環境調整(合理的配慮)

本人が変わるのではなく、環境を調整することで困りごとを減らします。

例:

  • 座席を前の方にする(ADHD:集中しやすい)
  • 予定を視覚的に示す(ASD:見通しが立つ)
  • タブレットで学習する(LD:読み書きの負担軽減)
  • 静かな環境を用意する(聴覚過敏への配慮)

💡 環境調整は「車椅子のスロープ」

環境調整は、階段に「スロープ」を設置するようなものです。車椅子の人に「歩けるようになれ」と訓練させるのではなく、スロープを作ることで、誰もが同じように建物に入れます。発達障害も同じで、「普通になれ」ではなく、環境を調整することで、誰もが活躍できます。

④多職種連携

医療、教育、福祉、就労等の各分野の専門家が連携して支援します。

  • 医療:診断、治療、服薬管理
  • 教育:学校での配慮、特別支援教育
  • 福祉:療育、生活支援
  • 就労:職業訓練、就労支援、職場定着支援

よくある誤解

誤解①:「育て方が悪いから発達障害になる」

真実:発達障害は生まれつきの脳の特性であり、育て方や環境が原因ではありません。保護者の責任ではありません。

誤解②:「発達障害は治る」

真実:発達障害は「病気」ではないため、「治る」ものではありません。ただし、適切な支援により、困りごとは減り、社会適応力は向上します。

誤解③:「知的障害がある」

真実:発達障害と知的障害は別のものです。発達障害のある人の多くは、平均的またはそれ以上の知的能力を持っています。

誤解④:「大人になれば治る」

真実:基本的な特性は続きますが、成長とともに対処法を学び、社会適応力は向上します。大人になって初めて診断される方もいます。

誤解⑤:「発達障害の人は〇〇ができない」

真実:発達障害は多様であり、「〇〇ができない」と一概には言えません。苦手なこともあれば、得意なこともあります。

⚠️ ラベリングに注意

「発達障害だから〇〇できない」「ASDだから〇〇が苦手」とラベルを貼ることは、本人の可能性を狭めます。診断名は支援のための情報であり、その人を定義するものではありません。「〇〇さんは〇〇が得意で、〇〇が苦手」と、個別の特性を見ることが大切です。


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関連記事:発達障害と不登校の支援をさらに深く理解する

発達障害の基礎知識を理解したら、次は具体的な支援制度や選択肢について学びましょう。以下の記事では、発達障害のあるお子さんやご本人が活用できる様々な支援サービスと学びの選択肢を詳しく解説しています。

🏥 専門的な相談・支援

🏫 不登校への対応

💻 学習支援の選択肢

🎓 進路・就労支援

📖 総合ガイド

これらの記事を組み合わせて読むことで、発達障害の特性を理解した上で、お子さんやご本人に最適な支援の組み合わせを見つけることができます。発達障害者支援センターや専門医に相談する際に、これらの選択肢について質問することもおすすめです。


まとめ:発達障害は「個性」であり「支援」で伸びる

この記事では、発達障害の基礎知識について解説しました:

  • 発達障害とは:生まれつきの脳の発達の違いにより、日常生活や社会生活で困難が生じる状態。「病気」ではなく「個性の偏り」。

    適切な理解と支援があれば、困りごとは減り、強みを活かせます。

  • 主な種類:①ASD(社会性・コミュニケーションの困難、こだわり)、②ADHD(不注意、多動性、衝動性)、③LD(読み、書き、計算の困難)。

    一人ひとり特性は異なり、複数の特性を併せ持つこともあります。

  • 診断の流れ:相談→医療機関受診→問診・検査→診断→支援計画。

    診断を受けることで、適切な支援が受けやすくなります。

  • 早期支援の重要性:早期発見・早期支援により、二次障害を予防し、適応力を向上させる。

    乳幼児健診を活用し、気になることがあれば早めに相談しましょう。

  • 支援の基本:個別性の尊重、強みを活かす、環境調整、多職種連携。

    「普通になれ」ではなく、「その人らしく活躍できる環境」を整えることが支援の目標です。

発達障害は、「できないこと」ではなく、「違うやり方が合っていること」です。右利きと左利きの違いのように、脳の使い方が違うだけです。適切な理解と支援があれば、発達障害のある人は、その個性を活かして社会で活躍できます。

次のステップとして、気になることがあれば、お住まいの地域の発達障害者支援センターや保健センターに相談してみましょう。早めの相談が、お子さんやご自身の可能性を広げます。

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