勉強しても頭に残らない理由とは?認知科学が教える記憶に残る学習テクニック

  • 公開日:2025/11/14
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「繰り返し読む」だけでは覚えられない!科学が証明した本当に効果的な勉強法

「教科書を何度も読んでいるのに、テストになると思い出せない…」
「蛍光ペンでハイライトしたはずなのに、全然頭に残っていない…」

こんな経験はありませんか?実は、多くの人が当たり前だと思っている勉強方法の中には、科学的には効果が低いとされているものが含まれています。逆に、ほんの少し方法を変えるだけで、記憶の定着率が飛躍的に向上する学習法も存在します。

この記事では、認知科学や教育心理学の研究に基づいた「本当に効果的な勉強法」を解説します。中学生から大学生、資格試験の受験者、さらには学び直しをしている社会人まで、すべての学習者に役立つ内容です。

なぜ多くの人が「効率の悪い勉強法」を続けてしまうのか

私たちは小学校から高校、大学と長い年月をかけて勉強してきましたが、「どうやって勉強すれば効率的なのか」を体系的に学ぶ機会はほとんどありません。そのため、周囲の人がやっている方法や、なんとなく「良さそう」に見える方法を真似してしまいがちです。

⚠️ 学習者が陥りがちな誤解
  • インプット重視の罠: 「たくさん読めば覚えられる」と信じて、教科書を繰り返し読むことに時間を費やす
  • 見た目の満足感: 蛍光ペンでカラフルにハイライトすると「勉強した気」になるが、記憶定着には結びつかない
  • 一夜漬けの常習化: テスト前に一気に詰め込むスタイルが習慣化し、長期記憶に残らない

実際、アメリカの有名大学の学生を対象とした調査では、84%の学生が「再読(繰り返し読むこと)」を使用しており、半数以上が最も重要な勉強法だと考えていたという結果があります。しかし、後述する通り、この方法は他の学習法と比較して効果が低いことが科学的に明らかになっています。

科学的に「効果が低い」とされる勉強法

まず、多くの人が実践しているにもかかわらず、認知科学の研究では効果が限定的とされている学習法を見ていきましょう。これらを知ることで、無駄な時間を減らし、より効果的な方法にシフトできます。

① 教科書やノートを「ただ繰り返し読む」

「教科書は7回読め」といったアドバイスを聞いたことがある人もいるかもしれません。確かに、1回読むよりも2回読んだ方が理解は深まります。実際、大学生を対象とした研究では、文章を2回読んだグループの方が1回読んだグループよりも穴埋め問題の正答率が高かったという結果があります。

しかし、3回目以降の再読では効果がほとんど向上せず、さらに他の学習法と比較すると効率が低いことが分かっています。2013年にダンロスキー教授らが発表した膨大な学習法研究のレビュー論文では、「再読の有用性は低い」と結論づけられています。

② 蛍光ペンでハイライト・線を引く

教科書や参考書に蛍光ペンでマーカーを引くと、視覚的に目立って「重要なポイントを押さえた」という満足感を得られます。しかし、残念ながらハイライトや線を引く行為そのものには、記憶定着効果がほとんどないことが研究で示されています。

1974年の古典的な研究では、学生を「ハイライトをしないグループ」「自分でハイライトするグループ」「他人がハイライトしたものを読むグループ」に分けてテストを行ったところ、テストの点数に有意な差が見られませんでした

ハイライトが有効なのは、「どこが重要かを正確に判断できる学習者」に限られます。しかし、学習の初期段階では何が重要かを見極めること自体が難しいため、結果的に効果が薄くなってしまうのです。

💡 たとえて言うなら

教科書を繰り返し読んだり、ハイライトを引くだけの勉強は、「食材を眺めているだけで料理がうまくなろうとするようなもの」です。実際に手を動かして調理(アウトプット)しなければ、スキルは身につきません。

科学が証明した「本当に効果的な勉強法」

それでは、認知科学の研究で「効果が高い」と実証されている学習法を紹介します。この2つの方法を組み合わせることで、記憶の定着率が劇的に向上します。

① アクティブリコール(能動的想起)

アクティブリコールとは、学んだ内容を「思い出す」作業を意識的に行うことです。簡単に言えば、教科書を見ずに「今日勉強したことは何だったか?」を頭の中で、または紙に書き出してみる行為です。

多くの人は、勉強を「インプット(読む・聞く)」の作業だと捉えがちです。しかし、認知科学の研究では、記憶を定着させるために最も重要なのは「アウトプット(思い出す・取り出す)」の作業だということが明らかになっています。

【アクティブリコールの効果を示す研究例】

科学誌『Science』に掲載された有名な研究では、80人の大学生を4つのグループに分けて学習効果を比較しました。

グループ1:1回だけ勉強

基準となるグループ

グループ2:4回繰り返し勉強

再読を重視

グループ3:概念マップ作成

視覚的整理を重視

グループ4:アクティブリコール

学んだことを思い出す練習

1週間後にテストを実施したところ、最も高得点だったのはアクティブリコールを行ったグループでした。興味深いことに、学生自身は「4回繰り返し勉強したグループ」が最も自信を持っていたのに対し、「アクティブリコール」グループは自分たちがあまり覚えていないだろうと予想していました。つまり、最も効果がなさそうに感じる方法が、実は最も効果的だったのです。

【アクティブリコールの具体的な方法】

✅ 今日から始められるアクティブリコール
  • 白紙に書き出す: 教科書を閉じて、覚えた内容を白い紙に書き出す(チラシの裏でもOK、綺麗に書く必要なし)
  • 練習問題を解く: 読んだ直後ではなく、少し時間を置いてから問題を解く
  • 声に出す: 通学・通勤中に「昨日学んだことは何だったか?」を声に出して思い出す
  • 誰かに教えるふりをする: 架空の生徒に教えるつもりで説明してみる
  • 暗記カードを使う: 表に質問、裏に答えを書いて繰り返しテスト

重要なのは、「思い出そうと努力する」プロセスそのものが記憶を強化するということです。忘れていたり、うまく思い出せなかったりしても問題ありません。その「思い出そうとする負荷」こそが、脳に記憶を刻み込むのです。

② 間隔反復(分散学習)

間隔反復とは、学習内容を一度にまとめて勉強するのではなく、時間を空けて繰り返し学ぶ方法です。これは「分散学習」とも呼ばれます。

人間の脳は、時間が経つとどんどん忘れていくようにできています。これは「エビングハウスの忘却曲線」として有名です。数日経つと、覚えたことのほとんどを忘れてしまいます。しかし、適切な間隔を空けて繰り返し学習することで、忘却曲線が緩やかになり、長期記憶に定着しやすくなることが分かっています。

【間隔反復の効果を示す研究例】

10歳前後の子どもを対象とした研究では、英単語を「同じ日にまとめて勉強したグループ」と「2回に分けて勉強したグループ」を比較しました。トータルの勉強時間は同じでしたが、5週間後のテストでは、間隔を空けて勉強したグループの方が高得点でした。

また、1979年のスペイン語学習の研究では、「1日で一気に覚えたグループ」「1日間隔で覚えたグループ」「30日間隔で覚えたグループ」を比較しました。30日後のテストでは、30日間隔や1日間隔で学んだグループの方が、一夜漬けグループよりも高得点でした。

📖 1日目:新しい内容を学ぶ(アクティブリコール)
🕒 2〜3日後:同じ内容を思い出す練習
🕒 1週間後:再度思い出す練習
🕒 2〜4週間後:さらに思い出す練習
🎯 長期記憶に定着!

③ 連続的再学習(アクティブリコール × 間隔反復)

アクティブリコールと間隔反復を組み合わせた学習法は、「連続的再学習(Successive Relearning)」と呼ばれ、最も効果的な学習戦略の1つとされています。

具体的な手順は以下の通りです:

📖 Step 1:新しい内容を学んだら、すぐにアクティブリコール(1〜3回思い出せるまで)
🕒 Step 2:数日から1週間後に、再度アクティブリコール
🕒 Step 3:さらに間隔を空けて、もう一度思い出す
✅ 忘れていたら教科書を見直し、また間隔を空けて繰り返す

ある研究では、通常の学習方法と連続的再学習を比較したところ、3日後および24日後のテストで、連続的再学習グループの方がはるかに高得点でした。

覚えにくいものを覚える「記憶術」の基本

アクティブリコールと間隔反復を実践しても、どうしても覚えにくいものがあります。たとえば、歴史の年号、専門用語、外国語の単語、数字の羅列などです。こうした「ピンとこない情報」を覚えるには、記憶術(Mnemonic Techniques)が有効です。

記憶術の基本原則

記憶術は紀元前から存在する古典的な技法で、その本質は「覚えにくいものを、覚えやすいイメージに変換する」ことです。

💡 記憶術の核心

人間の脳は、抽象的な情報(数字や専門用語)よりも、具体的なイメージ(人・物・場所)の方が記憶しやすい特性があります。さらに、感情を伴うイメージ、奇妙で予想外のイメージほど記憶に残りやすいことが分かっています。

実践例:年号を覚える

たとえば、「1929年 世界恐慌」を覚えたい場合:

  • 「29」を「肉」に変換(語呂合わせ)
  • 「株価暴落」と「肉が空から降ってくる」イメージを結びつける
  • 結果:高層ビルから大量の肉が落ちてくる不穏な光景を想像する

このように、数字を具体的な「物」や「人」に変換し、ストーリー化することで記憶に残りやすくなります。

実践例:英単語を覚える

たとえば、「colloquial(口語的な)」という単語を覚えたい場合:

  • 「collo」を「コロ助」(アニメキャラ)に変換
  • 「quial」を「起亜(自動車メーカー)」に変換
  • 「口語的」という意味と結びつける:歩道を歩いていたら、起亜の自動車に乗ったコロ助に話しかけられる場面を想像

この奇妙で具体的なイメージが、単語の意味とともに脳に刻まれます。

✅ 記憶術を使うときのポイント
  • 自分にとってしっくりくるイメージを使う(他人のゴロ合わせより、自分で作った方が効果的)
  • できるだけ具体的な「物」「人」「場所」に変換する
  • 奇妙で感情を伴うイメージにする(驚き、おかしさ、不気味さなど)
  • 慣れるまで時間がかかるが、練習すれば楽しくなる

学習者レベル別:実践アドバイス

【中学生・高校生向け】定期テスト・受験対策

✅ 今日から始められる具体的アクション
  • 教科書を読んだら、ページごとに目を閉じて要点を思い出す(30秒でOK)
  • 授業ノートは「読み返す」のではなく、翌日に白紙に再現してみる
  • 問題集は「解いた直後」ではなく、2〜3日後にもう一度解く
  • 通学中に「昨日学んだこと」を頭の中で復習する習慣をつける
  • 年号や化学式など覚えにくいものは、自分なりの語呂合わせやイメージを作る

【大学生・資格試験受験者向け】長期記憶の構築

✅ 効率的な学習スケジュールの組み方
  • 学習計画に「復習日」を最初から組み込む(初回学習→3日後→1週間後→1ヶ月後)
  • デジタルツールを活用(AnkiやQuizletなど間隔反復アプリ)
  • 講義動画やオンライン授業は「見るだけ」で終わらせず、必ず自分で要約を作る
  • 模擬試験は「点数確認」ではなく「アクティブリコールの練習」として活用
  • 一夜漬けは避け、最低でも3日以上に分散して学習する

【保護者向け】子どもの学習をサポートするために

✅ 家庭でできる学習サポート
  • 「今日学校で何を勉強したの?」と聞いて、子どもに説明させる(アクティブリコールの練習)
  • 「教科書を繰り返し読みなさい」ではなく、「問題を解いてみよう」と声をかける
  • テスト前の一夜漬けではなく、日常的に少しずつ復習する習慣を促す
  • 蛍光ペンやノート作りに時間をかけすぎていないか確認する
  • 記憶術に興味を持ったら、一緒に語呂合わせを考えてみる

【教育者向け】授業設計への応用

✅ 効果的な授業・指導のヒント
  • 授業の最後5分で「今日学んだことを書き出す時間」を設ける
  • 小テストは「評価」ではなく「学習ツール」として頻繁に実施
  • 前回の授業内容を次回の冒頭で復習する(間隔反復の実践)
  • 宿題は「教科書を読む」ではなく「練習問題を解く」形式に
  • 生徒に「なぜこの学習法が効果的なのか」を科学的根拠とともに説明する

よくある質問と誤解

Q1. 教科書を全く読まなくていいということですか?

A. いいえ、教科書を読むことは重要です。ただし、「読むだけ」で終わらせないことがポイントです。読んだ後に必ずアクティブリコール(思い出す練習)を組み合わせることで、記憶定着率が格段に向上します。

Q2. アクティブリコールは苦しいのですが、続ける必要がありますか?

A. はい、その「苦しさ」こそが効果の証拠です。思い出そうとして脳に負荷がかかるプロセスが、記憶を強化します。最初は辛いですが、慣れてくると「思い出せた!」という達成感が得られ、学習が楽しくなるという声も多くあります。

Q3. 間隔反復の「最適な間隔」はどれくらいですか?

A. 完全に確立された最適解はありませんが、一般的には「初回学習→2〜3日後→1週間後→2〜4週間後」という間隔が推奨されています。忘れかけたタイミングで復習するのが効果的です。

Q4. 記憶術は本当に効果がありますか?子どもっぽく感じます。

A. 記憶術は紀元前から使われている実証済みの技法で、記憶力コンテストのチャンピオンも使用しています。一見子どもっぽく感じるかもしれませんが、脳の特性を活かした合理的な方法です。特に、年号や専門用語など「ピンとこない情報」を覚える際に威力を発揮します。

⚠️ 注意すべきポイント
  • 睡眠を削って勉強時間を増やすのは逆効果: 記憶の定着には十分な睡眠が不可欠です
  • 「勉強時間」よりも「勉強の質」を重視: 長時間机に向かっているだけでは効果は低い
  • 完璧主義に陥らない: 忘れることは自然なプロセス。思い出せなくても自分を責めない

まとめ:今日から始められる「科学的勉強法」

🎯 この記事の要点

  • 効果が低い学習法: 教科書を繰り返し読むだけ、蛍光ペンでハイライトするだけ
  • 効果が高い学習法①: アクティブリコール(学んだことを思い出す練習)
  • 効果が高い学習法②: 間隔反復(時間を空けて繰り返し学ぶ)
  • 最強の組み合わせ: 連続的再学習(アクティブリコール × 間隔反復)
  • 覚えにくいものには: 記憶術(イメージ変換・語呂合わせ)を活用

✅ 今日から実践できる3つのステップ

  1. 教科書を読んだら、ページごとに目を閉じて要点を思い出す(30秒でOK)
  2. 問題集は「解いた直後」ではなく、2〜3日後にもう一度解く
  3. 覚えにくい年号や単語は、自分なりの語呂合わせやイメージを作る

この記事で紹介した学習法は、中学生から大学生、社会人の資格試験まで、あらゆる学習場面で応用できます。「勉強時間を増やす」のではなく、「勉強の質を変える」ことで、効率的に知識を身につけることができます。

まずは1つの科目、1つの単元から試してみてください。効果を実感できたら、他の学習にも広げていきましょう。

📚 参考・出典

  • Dunlosky, J., et al. (2013). “Improving Students’ Learning With Effective Learning Techniques” (学習効果を高める学習技法に関する包括的レビュー)
  • Karpicke, J. D., & Roediger, H. L. (2008). “The Critical Importance of Retrieval for Learning” Science誌掲載論文
  • 参考動画:「最高の勉強法・効率的な覚え方【科学的根拠のある効果的な学習方法について医者が解説】」(米国内科専門医 安川康介の医学チャンネル, YouTube, 2023年)
    https://www.youtube.com/watch?v=DDGVsAWgdYc

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