「うちの子、学校に行けなくなって…どこに相談すればいいの？」「発達障害があるかもしれない。これからどうしたら？」

そんな不安を抱えていませんか？ 大丈夫です。日本には、発達障害や不登校のお子さんを支える充実した公的支援制度があります。適切な支援を受けることで、お子さんは自分らしく成長し、社会で活躍する力を身につけることができます。

この記事では、令和5年度の最新統計データをもとに、発達障害・不登校の現状から、無料で使える公的支援制度、家庭でできる支援方法、学校との連携、進路・就労支援まで、保護者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。

この記事を読めば、以下のことがわかります：

• 不登校・発達障害の最新統計（353,970人、12年連続増加）
• 文部科学省の方針転換（学校復帰だけが目標ではない）
• 無料で使える公的支援制度（発達障害者支援センター、教育支援センター等）
• オンライン学習の出席扱い制度（7要件）
• 発達障害（ASD・ADHD・LD）の基礎知識
• 家庭で今日から始められる支援方法
• 学校・支援機関との連携のコツ
• 高校進学・就労支援の選択肢

注：発達障害・不登校の支援方法は多様です。この記事では主に公的支援制度を中心に解説していますが、民間のサポートサービスや医療機関など、他の選択肢もあります。お子さんの状況に応じて、最適な支援を選んでください。

1. 不登校・発達障害の現状｜最新統計データ（令和5年度）

不登校児童生徒数は過去最多の353,970人

文部科学省の「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、令和5年度の小中学校における不登校児童生徒数は353,970人に達しました。これは前年度（336,384人）から17,586人増加し、12年連続で過去最多を更新しています。

不登校の主な要因

文部科学省の調査では、不登校の要因として以下が挙げられています：

• 無気力・不安（51.8%）- 最も多い要因
• 生活リズムの乱れ（11.5%）
• いじめを除く友人関係（9.3%）
• 親子関係（5.7%）
• 学業不振（4.8%）

注目すべきは、発達障害やその傾向がある児童生徒の不登校も増加傾向にあることです。学校環境が合わない、感覚過敏で集団生活が苦痛、対人関係の困難など、発達特性が不登校の一因となるケースも少なくありません。

出典：文部科学省「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」

2. 文部科学省の方針転換｜「学校復帰」だけが目標ではない

令和元年10月の歴史的転換

令和元年（2019年）10月25日、文部科学省は不登校支援に関する重要な通知を発出しました。この通知により、不登校支援の目標が「学校復帰」から「社会的自立」へと明確に転換されました。

新しい支援の考え方：3つの柱

1. 学校復帰だけを目標としない

   学校に戻ることが唯一の正解ではなく、フリースクール、教育支援センター、オンライン学習など、多様な学びの場を認める。

2. 多様な教育機会の確保

   教育機会確保法（平成28年法律第105号）に基づき、学校以外の場での学びも正式に認める。

3. 関係機関の連携強化

   学校、教育委員会、児童相談所、医療機関、NPO等が連携し、切れ目のない支援を提供。

出典：文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について（通知）」令和元年10月25日

3. 発達障害の基礎知識｜ASD・ADHD・LDとは？

発達障害の定義

発達障害は、発達障害者支援法（平成16年法律第167号）において、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。

重要なポイント：

• 発達障害は「育て方」や「しつけ」の問題ではなく、脳の発達の個性です
• 適切な支援があれば、その人らしく力を発揮できます
• 早期発見・早期支援が、社会適応を大きく向上させます

主な発達障害の種類と特性

① ASD（自閉スペクトラム症）

主な特性：

• 社会的コミュニケーションの困難（視線が合いにくい、相手の気持ちを推測しにくい）
• 限定的・反復的な行動パターン（特定のルーティンへの固執、こだわり）
• 感覚過敏または鈍麻（音・光・触覚などに過敏または鈍感）

出現率： 約1%（100人に1人）

② ADHD（注意欠如・多動症）

主な特性：

• 不注意（忘れ物が多い、物をなくす、ケアレスミスが多い）
• 多動性（じっと座っていられない、静かに遊べない）
• 衝動性（順番を待てない、質問が終わる前に答える）

出現率： 約5%（20人に1人）

③ LD（学習障害）

主な特性：

• 読字障害（ディスレクシア）：文字を読むことが困難
• 書字障害（ディスグラフィア）：文字を書くことが困難
• 算数障害（ディスカリキュリア）：数の概念や計算が困難

出現率： 約4%（25人に1人）

出典：厚生労働省「発達障害者支援施策」

4. 公的支援制度の全体像｜無料で使える相談先

発達障害・不登校の支援には、国や自治体が提供する無料の公的支援制度が充実しています。多くの保護者が「どこに相談すればいいかわからない」と悩みますが、実は身近なところに相談窓口があります。

主な公的支援機関

① 発達障害者支援センター

概要： 都道府県・指定都市が設置する、発達障害に関する総合的な支援機関

設置数： 全国約90箇所

対象： 発達障害のある方、その家族、支援者

主なサービス：

• 相談支援（本人・家族からの相談に応じる）
• 発達支援（療育、ソーシャルスキルトレーニング）
• 就労支援（職業訓練、就労相談）
• 関係機関との連携（学校、医療、福祉機関をつなぐ）

費用： 無料

② 教育支援センター（適応指導教室）

概要： 教育委員会が設置する、不登校児童生徒のための学習・相談施設

設置数： 全国約1,700箇所

対象： 不登校または不登校傾向のある小中学生

主な活動：

• 学習支援（個別指導、小集団指導）
• 体験活動（スポーツ、創作活動、調理実習等）
• カウンセリング
• 学校復帰に向けた段階的支援

費用： 無料

出席扱い： 在籍校の校長判断により出席扱い可能

③ 児童発達支援・放課後等デイサービス

概要： 障害のある子どもに対する療育・支援サービス

設置数： 全国約18,000箇所（事業者公表値）

対象：

• 児童発達支援：未就学児（0-6歳）
• 放課後等デイサービス：就学児（6-18歳）

主なサービス：

• 日常生活動作の訓練
• 集団生活への適応訓練
• ソーシャルスキルトレーニング
• 学習支援

費用： 原則1割負担（上限あり、世帯収入により無料～37,200円/月）

利用方法： 市区町村で受給者証を取得

④ ハローワーク専門支援窓口

概要： 発達障害のある方の就労を専門的に支援

対象： 発達障害のある求職者

主なサービス：

• 職業相談・職業紹介
• 職場適応支援
• 職業訓練の紹介
• 障害者雇用枠での就職支援

費用： 無料

5. オンライン学習と出席扱い制度｜7要件を解説

自宅のオンライン学習で出席扱いになる制度

令和元年10月25日の文部科学省通知により、一定の要件を満たせば、自宅でのICT等を活用した学習活動が、在籍校の出席として扱われるようになりました。

出席扱いの7要件

利用できる教材・サービスの例：

• 文部科学省「学びの保障オンライン学習システム（MEXCBT）」
• 教育委員会が提供するオンライン教材
• 民間のオンライン学習サービス（すらら、スタディサプリ等）
• 通信教育教材

出典：文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について（通知）」令和元年10月25日

6. 家庭でできる支援の基本｜今日から始められる5つのこと

専門機関の支援も大切ですが、日々の家庭での関わりが、お子さんの成長に最も大きな影響を与えます。ここでは、今日から始められる基本的な支援方法を紹介します。

今日から始められる5つの基本支援

1. 肯定的な言葉がけ

2. 視覚的支援

言葉だけでなく、絵や図で示すことで理解が深まります。

• スケジュールボード： 一日の流れを絵カードで提示
• 手順書： 歯磨き、着替えなどの手順を写真で示す
• タイマー： 「あと5分」を視覚的に見せる

3. スモールステップ

大きな課題を小さく分解し、達成感を積み重ねます。

• 「宿題10問」→「まず5問だけやろう」
• 「部屋を片付けて」→「まず机の上だけ片付けよう」
• 「学校に行く」→「まず玄関まで行ってみよう」

4. 成功体験の積み重ね

「できた！」という体験が自己肯定感を育みます。

• 小さな達成を具体的に褒める（「すごいね」ではなく「〇〇ができたね」）
• 結果だけでなく、過程を認める（「頑張って挑戦したね」）
• 失敗を責めず、「次はどうする？」と一緒に考える

5. 保護者自身のケア

保護者が疲弊すると、お子さんへの支援も続きません。

• 完璧を求めず、「80点でOK」の心構え
• レスパイト（一時預かり、放課後デイ）を活用
• ペアレントメンターや家族会で情報交換
• 専門家に早めに相談（1人で抱え込まない）

7. 学校・支援機関との連携｜合理的配慮の求め方

連携がうまくいく5つのコツ

合理的配慮の具体例

発達障害のあるお子さんには、障害者差別解消法に基づき、学校で「合理的配慮」を受ける権利があります。

通級指導教室・特別支援学級の選択

• 通級指導教室： 通常学級に在籍しながら、週1-2回、特別な指導を受ける
• 特別支援学級： 少人数で個別のニーズに応じた教育を受ける
• 特別支援学校： より専門的な教育環境が整った学校

重要： 「どこにいるか」ではなく「適切な支援が受けられるか」が大切です。就学相談で、教育委員会の専門家が一緒に考えてくれます。

8. 進路と就労支援｜高校進学からその先まで

高校進学の選択肢

不登校・発達障害のある生徒には、多様な高校進学の選択肢があります。

就労支援の流れ

9. 家族を支えるプログラム｜保護者自身のケアも大切

発達障害・不登校のお子さんを支えるには、保護者自身も支援を受けることが重要です。以下の3つのプログラムがあります。

3つの家族支援プログラム

① ペアレントプログラム（入門編）

対象： お子さんの行動に困っている保護者（入門者向け）

内容： お子さんの行動を「見る・褒める・伸ばす」スキルを学ぶ

期間： 6-10回（週1回、1回90分程度）

特徴： グループワーク中心、楽しく学ぶ

② ペアレントトレーニング（実践編）

対象： より具体的な対応方法を学びたい保護者

内容： 行動分析に基づく具体的な対応スキル

期間： 10-15回（週1回、1回90-120分）

特徴： ホームワークあり、実践重視

③ ペアレントメンター（相談編）

対象： 同じ経験をした保護者と話したい方

内容： 先輩保護者による相談・情報提供

期間： 必要に応じて随時

特徴： 共感的サポート、経験の共有

参考リンク

• 文部科学省「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」
• 文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について（通知）」令和元年10月25日
• 厚生労働省「発達障害者支援施策」
• 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター
• 発達障害者支援法（e-Gov法令検索）