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米国2Eプログラムの対象となる障害カテゴリー完全ガイド|IDEA 2004に基づく定義と実際
- 公開日:2025/11/4
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「2E(Twice-Exceptional)という言葉を聞いたことはあるけれど、具体的にどんな子どもが対象なの?」「米国の2Eプログラムでは、どのような障害のカテゴリーが含まれるの?」そんな疑問をお持ちではありませんか?
この記事では、米国における2E(Twice-Exceptional:二重に特別な)プログラムの対象となる障害のカテゴリーについて、連邦法IDEA 2004に基づく定義、州やプログラムによる違い、具体的な障害の種類を詳しく解説します。
この記事を読めば、2Eプログラムの対象となる障害カテゴリーの全体像と、狭義・広義の定義の違いがわかります。
注:2Eの定義は米国内でも統一されておらず、州やプログラムによって対象となる障害のカテゴリーが異なります。この記事では一般的な枠組みを中心に解説しています。
⚠️ この記事の対象読者
この記事は、特別支援教育に関心のある教育関係者、2Eについて学びたい保護者、教育研究者を対象としています。専門用語も含まれますが、できるだけわかりやすく解説しています。
2E(Twice-Exceptional)とは?
2E(Twice-Exceptional:トゥワイス・エクセプショナル)とは、「二重に特別な」という意味で、知的に優れた才能(ギフテッド)を持ちながら、同時に学習障害や発達障害などの困難も抱える子どもたちを指します。
💡 2Eは「高性能だが特殊な設定が必要な機械」
2Eの子どもたちは、高性能だが特殊な設定やメンテナンスが必要な機械に例えられます。通常の使い方(標準的な教育方法)では、その性能を十分に発揮できず、むしろ故障(学習困難や行動問題)が目立ってしまいます。しかし、その機械の特性を理解し、適切な設定(個別の教育支援)を行えば、驚くほど高いパフォーマンス(才能の発揮)を示すのです。
米国では、このような2Eの子どもたちに対して、才能を伸ばす英才教育(Gifted and Talented Education)と、困難を支援する特別支援教育(Special Education)の両方を提供する2Eプログラムが実施されています。
1. 2Eの主要な障害カテゴリー(狭義/発達障害中心)
2Eプログラムの対象として、研究や教育実践で最も一般的に想定される障害は、日本でいう発達障害(神経発達症群)に該当するものです。
具体的な主要カテゴリー
✅ 2Eの主要な3つの障害カテゴリー
- SLD(Specific Learning Disability):限局性学習症/学習障害(LD)
- ADHD(Attention Deficit/Hyperactivity Disorder):注意欠如・多動症
- ASD(Autism Spectrum Disorder):自閉スペクトラム症(以前のアスペルガー症候群を含む)
SLD(学習障害)の重要性
学習障害(LD)は全障害児の約半数を占めるため、2Eの中でも特に重要なグループと見なされてきました。2Eの生徒は、過去にはGT/LD(gifted and talented students with LD)とも呼ばれてきました。
💡 GT/LDは「優れた料理人だが特定の食材が苦手」
GT/LD(ギフテッドで学習障害を持つ子ども)は、優れた料理人だが特定の食材の扱いが苦手な人に似ています。全体的な料理のセンスや創造性は抜群なのに、例えば「魚をさばく」という特定の技術だけがどうしてもうまくできません。周りからは「あんなに才能があるのに、なぜこんな基本的なことができないの?」と不思議がられますが、それがまさに2Eの特性なのです。
2014年の定義の提唱
2014年には、アメリカの一部の英才教育学者が、2Eの定義をADHD、ASD、SLDに限定することを提唱したこともあります。これは、2Eの中核的な対象を明確化しようとする動きでした。
2. 連邦法(IDEA 2004)に基づくカテゴリー
アメリカの公教育における特別支援の対象者は、連邦法であるIDEA 2004(個別障害者教育法:Individuals with Disabilities Education Act)に定義された特別教育の13種のカテゴリーに該当する者です。
IDEA 2004の重要なポイント
✅ IDEA 2004における2Eの位置づけ
- IDEA 2004は13の障害カテゴリーを定義している
- 知的障害(Intellectual Disability)は2Eの対象から除外されることが一般的
- 2Eに該当することが多いのは、主に発達障害(SLD、ADHD、ASD)
- 情緒・行動障害が加わることもある
⚠️ なぜ知的障害は除外されるのか
2Eの定義には「知的に優れた才能(ギフテッド)」という要素が含まれるため、知的障害は一般的に2Eの対象から除外されます。ただし、これは知的障害を持つ子どもに才能がないという意味ではなく、2Eという特定の枠組みの定義上の制約です。
Kaufman(2018)による分類
Kaufman(2018)は、2Eの人々が持つ障害として、以下を挙げています:
- 限局性学習障害(SLD)
- 言語障害
- 情緒や行動の障害
- 身体障害
- 自閉スペクトラム症(ASD)
- 注意欠陥多動性障害(ADHD)
このように、IDEA 2004の枠組みの中でも、発達障害以外のカテゴリーが2Eの対象となり得ることが示されています。
3. 州やプログラムによる柔軟な包含(広義の定義)
2Eの定義は統一されておらず、州や個々のプログラムによって、より広範な障害や困難を含む場合があります。
💡 州ごとの違いは「地域ごとの方言」
米国における2Eの定義の違いは、地域ごとの方言のようなものです。基本的な言語(2Eの概念)は共通していますが、州やプログラムによって「どこまでを含めるか」という境界線が異なります。ある州では「この特性も2Eに含める」と広く解釈され、別の州では「これは含めない」と狭く解釈されることがあります。
ウェストバージニア州の例(2003年)
ウェストバージニア州の2003年版ガイドブックによると、2Eに該当する障害として、以下の4つが挙げられています:
感覚障害
視覚障害: 視力や視野に関する障害
聴覚障害: 聴力に関する障害
身体・学習障害
身体障害: 運動機能や身体的な制約
学習障害: 読み書きや計算などの学習困難
これは、2Eが発達障害以外の身体的・感覚的な障害を持つ人々も対象とし得ることを示しています。
精神障害や他の困難の包括
学術的な議論や広範な解釈では、以下のような困難も2Eの対象として包括し得るとされています:
- 不安障害
- うつ病
- トゥレット症候群
- 強迫性障害(OCD)
特に、日本語で発行された2E関連文献では発達障害に限定される印象を受けることがありますが、実際にはより多様な障害が対象となり得ます。
4. 2Eの可能性に気づくためのチェックリスト
2Eの可能性に気づくためのチェックリスト(Checklist for Recognizing Twice Exceptional Children)のセクション構成は、プログラムの対象となりうる特性の広さを示しています。
✅ チェックリストに含まれる困難の種類
- 視覚情報処理の困難: 文字を読むのが遅い、図形の認識が苦手など
- 聴覚情報処理の困難: 指示を聞き取るのが苦手、音の区別が難しいなど
- 感覚情報処理の問題: 特定の音や触感に過敏、または鈍感など
- AD/HD様の言動: 注意散漫、衝動的な行動、多動など
- ディスレクシア/隠れディスレクシア: 読字障害、特に優れた知能で補っている場合
- ASD様の言動: 社会的コミュニケーションの困難、こだわりなど
- 不安と鬱に関する項目: 過度な不安、気分の落ち込みなど
💡 チェックリストは「健康診断の項目」
2Eのチェックリストは、健康診断の検査項目のようなものです。身長・体重だけでなく、視力、聴力、血液検査、心電図など、様々な側面から健康状態を確認します。2Eも同じで、学習面だけでなく、感覚、情緒、行動など、多角的に子どもの特性を観察することで、見逃されがちな困難に気づくことができるのです。
狭義と広義の定義の整理
ここまでの内容を整理すると、米国における2Eプログラムの対象となる障害のカテゴリーには、狭義の定義と広義の定義があります。
狭義の定義(中核)
対象: SLD、ADHD、ASD
根拠: 2014年の英才教育学者の提唱、研究や教育実践での一般的な想定
特徴: 発達障害(神経発達症群)を中心とした明確な枠組み
広義の定義(包括的)
対象: IDEA 2004の13カテゴリーの大部分(知的障害を除く)
根拠: 州やプログラムの方針、Kaufman(2018)等の研究
特徴: 視覚障害、聴覚障害、身体障害、情緒障害、精神障害なども包括
なぜ定義が統一されていないのか
米国において2Eの定義が統一されていない理由には、以下のような背景があります:
1. 連邦制の特性
米国は連邦制を採用しており、教育政策の多くは州に委ねられています。そのため、IDEA 2004という連邦法の枠組みはあるものの、その解釈や運用は州ごとに異なります。
2. 2Eという概念の比較的新しさ
2E(Twice-Exceptional)という概念自体が、教育分野では比較的新しいものです。研究や実践が進む中で、定義も変化・拡張される過程にあります。
3. 個別のニーズへの配慮
2Eの子どもたちは一人ひとり異なる特性を持つため、柔軟な定義の方が、個別のニーズに応じた支援を提供しやすいという側面もあります。
日本との違い
日本では、2Eという概念自体がまだ十分に認知されておらず、公的な教育制度としての2Eプログラムも確立されていません。
⚠️ 日本における2E支援の現状
日本では、ギフテッド教育と特別支援教育が別々の枠組みで運営されており、両方のニーズを持つ2Eの子どもたちへの統合的な支援は限定的です。米国の2Eプログラムの知見を参考にしながら、日本独自の支援体制の構築が求められています。
まとめ:米国2Eプログラムの対象となる障害カテゴリー
この記事では、米国における2Eプログラムの対象となる障害のカテゴリーについて解説しました:
- 2E(Twice-Exceptional)とは:知的に優れた才能(ギフテッド)を持ちながら、同時に学習障害や発達障害などの困難も抱える子どもたち
英才教育と特別支援教育の両方が必要な「二重に特別な」存在です。
- 主要な障害カテゴリー(狭義):SLD(学習障害)、ADHD(注意欠如・多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)
これらは2Eの中核的な対象であり、特にSLDは全障害児の約半数を占める重要なグループです。
- IDEA 2004に基づくカテゴリー:連邦法で定義された13の障害カテゴリーのうち、知的障害を除く大部分が対象となり得る
言語障害、情緒・行動障害、身体障害なども含まれます。
- 州やプログラムによる柔軟な包含(広義):視覚障害、聴覚障害、身体障害、精神障害(不安障害、うつ病等)も対象となり得る
ウェストバージニア州の例では、視覚障害、聴覚障害、身体障害、学習障害の4つが明示されています。
- チェックリストの多様性:視覚・聴覚情報処理、感覚処理、AD/HD様言動、ディスレクシア、ASD様言動、不安・鬱など、多角的な観察項目
2Eの可能性を見逃さないため、様々な側面から子どもの特性を確認する必要があります。
- 定義の非統一性:連邦制、概念の新しさ、個別ニーズへの配慮などの理由で、州やプログラムによって定義が異なる
狭義の定義(SLD、ADHD、ASD)と広義の定義(IDEA 2004の大部分)の両方が存在します。
米国における2Eプログラムの対象となる障害のカテゴリーは、SLD、ADHD、ASDを中心としつつも、州やプログラムの方針により視覚障害、聴覚障害、身体障害、情緒障害、不安や鬱など、IDEAの特別教育カテゴリーの大部分(知的障害を除く)を包括する可能性があります。日本でも、2Eの子どもたちへの理解と支援体制の構築が今後の課題となっています。

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