小学校必修化で変わるプログラミング教育|保護者が知るべき全知識
- 公開日:2025/9/21
- 最終更新日:
- 教育

小学校必修化で変わるプログラミング教育|保護者が知るべき全知識
2020年必修化の真の目的から家庭でできる準備まで完全ガイド
この記事でわかること
🚀 重要なポイント
2020年度から小学校で必修化されたプログラミング教育は、単に「プログラムを書く技術」を学ぶのではありません。文部科学省が目指すのは「プログラミング的思考」の育成です。この記事では、保護者として知っておくべき全知識と、家庭でできる具体的なサポート方法をお伝えします。
プログラミング教育必修化の背景と真の目的
なぜ必修化されたのか?
🔍 必修化の3つの背景
- Society 5.0時代への対応:AI・IoTが当たり前の社会で生きる力の育成
- IT人材不足の深刻化:経済産業省の調査では2030年に最大79万人のIT人材が不足予測
- 論理的思考力の重要性:全ての学習や職業で必要とされる基礎的な思考力の育成
プログラミング教育の真の目的
文部科学省が定める3つの柱
- プログラミング的思考の育成
物事を順序立てて考え、試行錯誤しながら問題を解決する思考力 - プログラムの働きやよさへの気付き
身の回りの便利な道具にプログラムが使われていることの理解 - 各教科での学びの深化
算数・理科・総合的な学習の時間等でプログラミングを活用した学習
✨ 保護者が理解すべき重要な点
「プログラミング言語を覚える」ことが目的ではありません。重要なのは:
- 論理的に考える力(筋道を立てて考える)
- 創造性を発揮する力(新しいアイデアを形にする)
- 試行錯誤する力(うまくいかない時に別の方法を考える)
- 協働する力(仲間と力を合わせて問題解決する)
国際的な動向との関係
国・地域 | 導入時期 | 対象年齢 | 特徴 |
---|---|---|---|
イギリス | 2014年 | 5-16歳 | コンピューターサイエンスとして独立教科化 |
フィンランド | 2016年 | 7-16歳 | 数学や技術科目に統合 |
韓国 | 2018年 | 6-18歳 | 段階的なプログラミング技能習得 |
日本 | 2020年 | 6-12歳(小学校) | プログラミング的思考に重点 |
小学校で実際に学ぶ内容と授業の進め方
学年別の学習内容
学年 | 主な学習内容 | 使用する教科 | 具体的な活動例 |
---|---|---|---|
1-2年生 | 順序立てて考える基礎 | 生活科・算数 | お手伝いの手順を考える、道順を説明する |
3-4年生 | 条件分岐・繰り返しの概念 | 算数・理科 | 図形の作図、植物の観察記録 |
5-6年生 | 本格的なプログラミング体験 | 算数・理科・総合 | Scratchでゲーム作成、センサーを使った実験 |
代表的な授業例
📐 算数×プログラミング「正多角形をかこう」(5年生)
学習のねらい:正多角形の性質を理解し、プログラミングで作図する
- 正三角形、正方形、正五角形の角度を計算
- Scratchを使って「○歩進む」「○度回る」を繰り返す
- 角度や辺の数を変えて様々な図形を作成
身につく力:数学的な規則性への理解、論理的思考、創造性
🔬 理科×プログラミング「電気を効率よく使おう」(6年生)
学習のねらい:センサーとプログラミングで省エネを考える
- 明るさセンサーを使った自動点灯システム
- 人感センサーで必要な時だけ動くシステム
- プログラムによる効率的な電気の使い方を考案
身につく力:科学的思考、問題解決能力、社会への応用力
学校で使用される主な教材・ツール
🛠️ よく使われるプログラミング環境
- Scratch(スクラッチ):ブロックを組み合わせる視覚的なプログラミング言語
- Viscuit(ビスケット):絵を描いてアニメーションを作る簡単なツール
- プログラミン:文部科学省開発の子ども向けプログラミング言語
- Hour of Code:世界中で使われている1時間のプログラミング体験
家庭でできる学習準備と環境づくり
年齢別準備チェックリスト
🎒 5-6歳(入学前)の準備
- パソコンやタブレットに触れる機会を作る
- マウスやタッチパネルの基本操作を覚える
- 順序立てて物事を考える習慣をつける
- 「もし○○なら△△する」という条件分岐の概念に親しむ
- 間違いを恐れずに試行錯誤する姿勢を育てる
📝 7-9歳(低学年)の準備
- キーボードでの文字入力の練習
- 簡単なプログラミングツールに挑戦
- ゲームのルールを自分で作って遊ぶ
- レシピや作り方を順序立てて説明する練習
- 「なぜ?」「どうして?」の疑問を大切にする
🚀 10-12歳(高学年)の準備
- 本格的なプログラミングツールの体験
- オリジナル作品の制作にチャレンジ
- 友達や家族とプログラミング作品を共有
- 身の回りのデジタル機器の仕組みに興味を持つ
- プログラミング的思考を他の学習にも応用
家庭環境の整備
💻 推奨する学習環境
- デバイス:パソコン(Windows/Mac)またはタブレット
- インターネット環境:安定したWi-Fi接続
- 学習スペース:集中できる静かな場所
- 時間設定:1日15-30分の継続的な学習時間
- 保護者の関与:週1-2回の進捗確認と励まし
無料で始められる学習リソース
ツール名 | 対象年齢 | 特徴 | 学習時間 |
---|---|---|---|
ScratchJr | 5-7歳 | タブレット向け、絵本のような操作 | 10-15分/回 |
Scratch | 8歳以上 | 世界標準、豊富な作品共有 | 20-45分/回 |
Code.org | 4歳以上 | 段階的カリキュラム、日本語対応 | 15-30分/回 |
Viscuit | 3歳以上 | 直感的操作、アート重視 | 10-20分/回 |
保護者のサポート方法と心構え
効果的なサポートの原則
👨👩👧👦 保護者の役割(教える人ではなく、応援する人)
- 興味を示す:「今日は何を作ったの?」「面白そうだね」
- プロセスを褒める:結果よりも取り組む姿勢や工夫を評価
- 失敗を恐れない環境:「間違えても大丈夫」の安心感
- 一緒に学ぶ姿勢:「教えて」「私にもやらせて」
- 継続のサポート:学習習慣の定着を長期的に支援
プログラミングを知らない保護者でもできること
🤝 技術知識不要のサポート方法
- 質問で思考を促す:「次はどうなると思う?」「なぜそうなったのかな?」
- 作品を一緒に楽しむ:子どもが作ったゲームを一緒にプレイ
- 発表の場を作る:家族や友達に作品を見せる機会を設ける
- 関連する本や動画を探す:プログラミングへの興味を広げる
- 学習環境を整える:集中できる時間と場所の確保
子どもが困った時の対処法
💡 場面別対応ガイド
- エラーで動かない時:「エラーは新しい発見のサイン。一緒に探してみよう」
- 思うように作れない時:「最初はみんなそう。少しずつ上達するよ」
- 他の子と比較してしまう時:「君には君だけの面白いアイデアがある」
- 飽きてしまった時:「今度は○○を作ってみない?」新しい挑戦を提案
学校との連携方法
📞 学校とのコミュニケーション
- 授業参観でプログラミングの授業を見学
- 担任の先生に家庭学習の状況を共有
- 学校で使用している教材やツールを確認
- 保護者会でプログラミング教育について質問
- 他の保護者との情報交換
中学・高校・大学入試への影響と進路
段階的な教育制度の変化
📅 教育制度改革のタイムライン
- 2020年:小学校でプログラミング教育必修化
- 2021年:中学校で「技術・家庭科」にプログラミング内容を拡充
- 2022年:高校で「情報I」必修化(プログラミングを含む)
- 2025年:大学入学共通テストに「情報」が出題科目に追加
大学入試への具体的影響
🎓 2025年以降の大学入試変化
- 共通テスト「情報」:プログラミング・データサイエンス・情報セキュリティが出題範囲
- 国立大学の多くが「情報」を必須科目化:理系だけでなく文系学部でも
- AO入試・推薦入試:プログラミング作品やICTスキルが評価要素に
- 情報系学部の拡充:AI・データサイエンス系学部の新設が相次ぐ
将来のキャリアへの影響
分野 | プログラミングスキルの活用例 | 求められるレベル | 年収への影響 |
---|---|---|---|
IT・システム開発 | アプリ開発、AI・機械学習、インフラ構築 | 高 | 平均20-30%アップ |
金融・保険 | フィンテック、リスク分析、自動取引システム | 中 | 平均15-25%アップ |
製造・ものづくり | IoT、ロボティクス、品質管理システム | 中 | 平均10-20%アップ |
医療・バイオ | 医療データ解析、診断支援システム | 中 | 専門性により大幅アップ |
🌟 プログラミング的思考が活かされる職業
技術職以外でもプログラミング的思考は重要です:
- 経営・マネジメント:論理的な課題分析と解決策立案
- 教育:体系的なカリキュラム設計と学習効果の最適化
- デザイン・クリエイティブ:ユーザー体験の設計と改善
- 営業・マーケティング:データに基づく戦略立案
年齢別学習ロードマップ
5-6歳:基礎準備期
目標:論理的思考の土台作り
- 順序立てて物事を考える習慣
- 「もし〜なら」の条件分岐に慣れる
- デジタルデバイスへの親しみ
- 間違いを恐れない姿勢
推奨活動:ScratchJr、パズル遊び、料理のお手伝い
7-9歳:体験導入期
目標:プログラミングの楽しさを実感
- ビジュアルプログラミングツールの体験
- 簡単なゲームやアニメーション作成
- 基本的なプログラミング概念の理解
- 作品を人に見せる喜び
推奨活動:Scratch入門、Code.org、ビスケット
10-12歳:応用発展期
目標:オリジナル作品の制作
- 複雑なプログラムの設計と実装
- 他の教科との関連付け
- チームでの協働制作
- プログラミングコンテストへの参加
推奨活動:Scratch上級、micro:bit、プログラミング教室
13歳以降:専門性深化期
目標:将来のキャリアを見据えた学習
- テキストベースプログラミング言語の習得
- AIやデータサイエンスの基礎
- 実社会の課題解決への応用
- 進路選択への活用
推奨活動:Python、JavaScript、13歳からの進路相談
📖 さらに詳しい学習方法は
小学生プログラミング教育の完全ガイド2025年版で、具体的な教材選びやスクール選択について詳しく解説しています。
家庭でできるプログラミング的思考アクティビティ
デジタルツールを使わない活動
🍳 料理でプログラミング思考
対象年齢:5歳以上
活動内容:
- レシピを順序立てて整理する
- 「もし材料がなかったら」の代替案を考える
- 効率的な手順を考えて時間短縮にチャレンジ
- 分量を変えた時の調整方法を計算
身につく力:順次処理、条件分岐、変数の概念
🎲 ボードゲームで論理思考
対象年齢:6歳以上
推奨ゲーム:
- 将棋・チェス:先を読む力、戦略的思考
- 人生ゲーム:選択の結果を予測する力
- ブロックス:空間認識、最適化思考
- カードゲーム:確率、条件判断
身につく力:戦略的思考、問題解決、論理的推論
📝 オリジナルルール作り
対象年齢:7歳以上
活動内容:
- 既存のゲームのルールを改良する
- 新しい遊びのルールを一から考える
- ルールの矛盾がないかチェックする
- 友達に説明してフィードバックをもらう
身につく力:システム設計、デバッグ思考、コミュニケーション
簡単なデジタル活動
💻 家族プログラミング発表会
頻度:月1回程度
進め方:
- 子どもが作った作品を家族に披露
- 作品の工夫したポイントを説明してもらう
- 家族からの質問や感想を聞く
- 次に作りたいものについて話し合う
効果:発表力向上、継続意欲の維持、家族の理解促進
学習環境の工夫
🏠 プログラミング思考を育む家庭環境
- 「なぜ?」「どうして?」の質問を歓迎する雰囲気
- 失敗を「学習の機会」として捉える価値観
- 試行錯誤を楽しむ時間的余裕
- デジタルとアナログのバランスの取れた活動
- 子どもの興味を起点とした学習の進め方
🌐 パソコン学習の基礎について
プログラミング学習と並行して、基本的なパソコンスキルも重要です。【小中高生向け】パソコンを何から学ぶ?未来につながる学習ステップとコツでは、年齢に応じたパソコン学習の進め方を詳しく解説しています。
保護者からのよくある質問
はい、全ての子どもにとって有益です。プログラミング教育の目的は「プログラマーを育てること」ではなく、「論理的思考力」「問題解決能力」「創造性」を育むことです。
これらの能力は、将来どのような職業に就くとしても必要な基礎的なスキルです。また、デジタル社会で生きる現代の子どもたちにとって、コンピューターの仕組みを理解することは「読み書き計算」と同じレベルで重要な素養となっています。
もちろんできます。技術的な知識よりも大切なのは、子どもの学習に対する関心と励ましです。
- 作品を見て「すごいね」「面白いね」と関心を示す
- 「どうやって作ったの?」「次は何を作る?」と質問する
- 失敗した時に「大丈夫、みんな最初はそうだよ」と励ます
- 学習時間を確保し、集中できる環境を提供する
むしろ、一緒に学ぶ姿勢を見せることで、子どもの学習意欲がより高まります。
基本的な理解には学校の授業で十分ですが、より深く学びたい場合や、子どもが興味を示している場合は家庭学習も有効です。
家庭学習のメリット:
- 子どもの興味やペースに合わせた学習ができる
- より多くの作品制作時間を確保できる
- 家族とのコミュニケーション機会が増える
- 将来の進路選択の幅が広がる
ただし、無理強いは逆効果です。子どもの様子を見ながら適度に取り入れることが大切です。
基本的な学習は無料から始められます。費用の目安は以下の通りです:
- 無料:Scratch、Code.org、Viscuitなどの基本ツール
- 1,000-3,000円/月:有料学習アプリやオンライン教材
- 5,000-15,000円/月:プログラミング教室(グループレッスン)
- 15,000-30,000円/月:個別指導やオンライン家庭教師
まずは無料のツールから始めて、子どもの興味や理解度に応じて段階的に投資することをお勧めします。
無理に興味を持たせようとせず、子どもの好きなことからプログラミング的思考につなげてみましょう。
- ゲーム好き:「ゲームってどうやって作られているんだろう?」
- 絵を描くのが好き:デジタルアートやアニメーション制作
- 音楽好き:音楽制作ソフトやリズムゲーム制作
- 工作好き:ロボットプログラミングやIoT工作
また、プログラミング以外の活動(料理、ゲーム、工作など)を通じて論理的思考力を育むことも同様に価値があります。
2025年から大学入学共通テストに「情報」が追加され、プログラミングも出題範囲に含まれます。
必要な対策レベル:
- 基本レベル:アルゴリズムの基礎理解、フローチャートの読み書き
- 応用レベル:簡単なプログラムの作成と読解
- 発展レベル:データ構造、効率的なアルゴリズムの理解
小学校からの継続的な学習があれば、中学・高校での「情報」科目に無理なく対応できます。早期から学習習慣を身につけることが最も効果的な対策です。
どちらもメリット・デメリットがあるため、お子さんの性格や家庭の状況に応じて選択しましょう。
教室のメリット:体系的なカリキュラム、専門的な指導、仲間との交流
家庭学習のメリット:費用が安い、自分のペースで学習、家族とのコミュニケーション
判断のポイント:
- 子どもが一人で集中できるか
- 保護者のサポート時間があるか
- 経済的な負担は問題ないか
- 通学の時間や距離は適切か
まずは家庭学習から始めて、必要に応じて教室を検討するのも良い方法です。
🔗 参考リンク・関連資料
🌟 お子さんの未来を拓くプログラミング教育
プログラミング教育必修化は、お子さんにとって大きなチャンスです。早めの準備と継続的なサポートで、論理的思考力と創造性を育み、将来の可能性を最大限に引き出しましょう。
📝 更新履歴
- 2024年3月:記事初版公開
- 2024年3月:大学入試情報を最新版に更新
- 2024年3月:家庭学習アクティビティを追加
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